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分割後に新たな財産が発見された場合に備えて

質問

父が死亡し、相続人は母と私と弟の3人です。遺産分割協議をしようと思っているのですが、父には家族に内緒にしていた預金があるようです。金額や取引銀行などは今のところ判明していないのですが、将来、この預金が判明したときに備え、遺産分割はどのようにしたらよいのでしょうか。

答え

 まずは、遺産分割協議に入る前に、お父様の財産は郵便物やメモ書き、貴重品の保管場所や貸金庫などから手がかりを探し、預貯金は残高証明書等にて確認の上、遺産分割協議に入ります。しかし、見つけにくい預貯金や財産もありますので、そのときに備えて、後日に遺産の存在が判明した場合の遺産分割の方法について相続人間で話し合い、合意が出来ましたらその合意内容を遺産分割協議書に明記します。

 では、どんな遺産分割の方法があるかといいますと、主に次の3種類があります。

 ①新たな財産は、特定の相続人が取得する

 ②新たな財産について、取得割合を定めておく

 ③新たな財産について、判明後改めて分割協議を行う

 新たな財産がどのようなものであってもこれを特定の相続人に取得させると相続人間で明白に合意がある場合が①です。

しかし、今から遺産分割協議しようとされている財産を法定相続分の比率で決めようとしておられる場合には、後日発見された財産についても同じような基準によって決めるのが公平になりますので、その場合は②になります。

また、新たな財産が些細なものや価値のないものなのか、高額なものになるのか全く見当がつかない場合、③を選択するか、もしくは、些細なものは特定の相続人に、高額な場合は分割する...などという、①と③を組み合わせたものでもよいでしょう。

相続人が相続放棄をしないまま死亡したとき

質問

多額の借金を残して死亡した祖父の相続を放棄する予定だった父が相続放棄の手続きをとる前に急逝してしまいました。 父の遺産は相続したいのですが、祖父の借金は相続したくありません。どうすればよいでしょうか。

答え

 祖父の相続について父が相続の承認も放棄もしないまま祖父の相続開始後3か月以内に死亡し、相談者が父の相続人となった今回のような場合を「再転相続」といい、相続放棄ができる期限の起算は再転相続人、つまり相談者が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算します。これは相談者が父の死亡により自己が相続人になったことを知った時であって祖父の死亡を知っていたか否かは直接には関係ありません。

この場合、相談者は祖父から父への相続と父から相談者への相続の2つの権利を持つことになります。

つまり、

①祖父から父への相続も父から相談者への相続もどちらも承認する。

②どちらも放棄する。

③祖父の相続については放棄するが、父の相続については承認する。

の3つが選択可能です。

父の相続について放棄し、祖父の相続については承認することはできません。なぜなら父の相続を放棄した時点で父が持つ祖父からの相続も承継されないことになるからです。

したがって、父の相続を承認するのであれば祖父の相続に関して承認するか放棄するか選択する権利も承継しているので、祖父の相続に関してのみ、放棄することは可能です。

 

 

公正証書遺言の証人

質問

公正証書遺言の証人には、どのような人がなれるのでしょうか?

答え

 公正証書遺言を作成する際には、2人以上の証人が必要となります。しかし、以下のような人は、民法で証人になることができないとされています。

民法974  次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。

 未成年者

 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族

 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

 

これは、利害関係があったり正常な判断能力がない者は遺言の証人にはなれないということです。したがって、遺言する人の身内(配偶者や親など)は証人になることが出来ず、ある程度第三者的な立場の人間が証人にならないといけません

また、証人となるべき者がいない場合には、公証役場で、証人の手配もしてもらえます。自分の回りに証人になる適当な知り合いが見当たらない場合、また証人を頼んで後に気を使いたくない場合などに利用します。

封印されていない自筆証書遺言

質問

封印されていない自筆証書遺言の場合は、裁判所の検認は必要ですか?また、そもそも有効ですか?

答え

遺言書の検認(裁判所HPより)

 遺言書(公正証書による遺言を除く。)の保管者又はこれを発見した相続人は,遺言者の死亡を知った後,遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して,その「検認」を請求しなければなりません。また,封印のある遺言書は,家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。
 検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

 

自筆証書遺言の場合、それが遺言書だとわからないような封筒に入っているという場合も多く、開封して初めて遺言書だと分かる場合も少なくありません。単に封がされただけで封をした箇所に押印がない場合や証紙が張られていない場合、「封印」に当たらないので、開封して遺言かどうか確認しても特に違反ではありません。

また、自筆証書遺言の要件を定めた民法968条第1項をみると、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」とだけ書かれています。したがって、封印をすることは自筆証書遺言の要件ではないのです。

ここで疑問としてあがってくることは、封印をしていないのだからそもそも勝手に開封するということもなく、家庭裁判所での検認という手続は不要なのではないかという点です。この点に関して、封印されていない自筆証書遺言でも家庭裁判所での検認という手続は必要ですし、封印されていない自筆証書遺言でも検認はしてくれます。

したがって、封印されていない自筆証書遺言であっても、裁判所の検認は必要(民法1004条)ですが、封印されていない場合は、遺言書の写しを検認申立時に家庭裁判所に提出する必要があります。

 

検認自体は有効・無効を判断する手続ではないので、自筆証書遺言が有効か無効かは民法968条に規定されている要件を満たしていれば有効となります。

 

 

民法968条【自筆証書遺言】 自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押さなければならない. 自筆証書中の加除その他の変更は,遺言者が,その場所を指示し,これを変更した旨を付記して特にこれに署名し,かつ,その変更の場所に印を押さなければ,その効力を生じない.

遺言書の検認

質問

私の父が「遺言書」を残して死亡しました。すぐに開封してよいか迷っています。どうすべきでしょうか。

答え

 遺言書の発見者はすぐに遺言書を開封してはいけません。遺言書を発見した者または保管している者は、家庭裁判所に遺言検認の申立てを行い,家庭裁判所で開封してもらう必要があります。

ただし、公正証書遺言は、遺言書の原本が公証役場に保管してあるので検認の必要はありません。

「検認」とは、その遺言書の偽造や変造を防ぐために、遺言書がどんな紙に書かれているかなどを調べて遺言書の存在を確認することです。

遺言書の証拠保全手続きのようなもので、内容が有効か無効かを問うものではありません。したがって、正式な遺言の形式に合致していない遺言書であっても検認を受ける必要があります。

また、封が施されている遺言書は、家庭裁判所で相続人または代理人の立会いのもとでなければ開封することができません。

ただし、家庭裁判所が相続人全員に呼び出しを行えば、申立人以外の相続人が検認期日に出席するかどうかは,各人の判断に任されており,全員がそろわなくても検認手続は行われます。

債務控除

質問

平成24年5月に準確定申告をしたのですが、平成22年~24年の被相続人の確定申告が間違っており、平成24年分の所得を含めて修正申告をして、各年分の本税・附帯税の納付を行いました。この税金は相続税ではどのような取り扱いになりますか。

答え

 1年前・2年前の確定申告の修正申告による本税・附帯税、及び準確定申告による本税は債務控除の対象になりますが、準確定申告に関わる附帯税は債務控除の対象にはなりません。

 

①債務控除・葬式費用

 相続税は相続などにより受けた利益に課税されるものであるため、相続人等が被相続人の債務・葬式費用を負担するときは、相続財産の価格から控除して相続税の課税価格を計算することとしています。

 債務控除の対象になるものは、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。なお、被相続人に課税される税金で被相続人の死亡後相続人などが納付又は徴収されることになった所得税などの税金については被相続人が死亡したときに確定していないもの(相続時精算課税適用者の死亡によりその相続人が承継した相続税の納税に係る義務を除きます。)であっても、債務として遺産総額から差し引くことができます。

 また、葬式費用も相続財産の価格から控除されますが、通常、葬式費用として認められるものは、(1)死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用、(2)遺体や遺骨の回送にかかった費用、(3)葬式や葬送などを行うときやそれ以前に火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます。) (4)葬式などの前後に生じた出費で通常葬式などにかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。) (5)葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用が挙げられます。

 

②債務控除の対象にならない公租公課

 公租公課は相続人等の責めに帰すべき事由により納付し、又は徴収されることとなった延滞税、利子税及び各種加算税に相当する税額は含まれません。

 したがって、平成22年・23年の所得税の本税及びそれに対する附帯税は、本来当初の申告時に被相続人が正しく申告するか、相続開始前に被相続人が修正申告を行い納付すべきものであるため、これは被相続人の責めに帰すべき事由となります。また、平成24年の準確定申告に関わる本税も、被相続人が負担すべき税金になりますので、債務控除の対象になります。

 しかし、平成24年の準確定申告に関わる附帯税については、相続人等が正しく申告を行うことで免れたものであるため、相続人等の責めに帰すべき事由があるとして、債務控除の対象となりません。

 

③その他債務控除の対象とならないもの

 墓所や霊びょう等に関する債務は非課税財産に関する債務として債務控除の対象にはなりません。また、相続放棄をした者が債務を負担する場合、放棄した者は当初から相続人でないとみなされるため、債務控除の対象になりません。ただし、葬式費用は相続放棄した場合でも控除できます。

 また、葬式に係るものではないので初七日法要費用・四十九日費用等の法会に要する費用なども控除の対象にはなりません。香典返しは、香典が相続財産とされないことにより、控除の対象にはなりません。

 さらに、制限納税義務者においては、債務控除は取得した財産に係る債務のみが控除でき、葬式費用は控除できません。 

相続財産

質問

相続税はどのようなものに課税されるのですか?

答え

本来相続や遺贈などにより取得した財産、及び相続や遺贈などにより取得したとみなされる財産に相続税は課せられます。

①本来の相続財産

 相続税がかかる財産は、本来の相続や遺贈という形で取得した財産で、金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものをいいます(相2,相基1121)。

 具体的には、被相続人が死亡の時現在において所有していた土地、家屋、有価証券、預貯金、現金などのその他経済的価値を有する一切の財産です。

②みなし相続財産

 みなし相続財産とは、民法上の相続財産ではありませんが、実質的には相続や遺贈によって財産を取得したことと同様な経済的効果があると認められる場合には、課税の公平を図るため、その受けた利益などを相続や遺贈によって取得したものとみなして、相続税の課税財産としています(相3)。

 具体的には、生命保険金・退職手当金・功労金(一定額は非課税)、生命保険契約に関する権利、定期金に関する権利、保証期間付定期金に関する権利、契約に基づかない定期金に関する権利、その他の利益の享受などがあげられます。

③相続時精算課税制度に係る贈与財産

 相続時精算課税制度を選択適用した場合の贈与財産については、相続税の対象となります。

 子は、親からの相続の時に、それまでの贈与財産と相続財産とを合算して計算した相続税額から、既に支払った相続時精算課税制度に係る贈与税相当額を控除することになります。その際、相続税額から控除しきれなかった場合には、その控除しきれなかった贈与税相当額の還付を受けることができます。

 なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の時価となります。

④相続開始前3年以内に柀相続人から贈与を受けた財産

 被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けた財産は相続の対象となります(相19)。この場合の財産の価額は、贈与時の評価額となり、相続時の評価額ではありません。また、相続税と贈与税の二重課税を避けるため、課税された贈与税は贈与税額控除として相続税から税額控除されます。ただし、贈与税額控除が算出された相続税額より多い場合であっても、贈与税が還付されることはありません。

 また、相続開始前3年以内に被相続人その配偶者(贈与時点で被相続人との婚姻期間が20年以上である者に限ります)が贈与により取得した居住用不動産又は金銭で、特定贈与財産に該当するものについては、その価額を相続税の課税価額に算入しないこととされています。

 特定贈与財産とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

 1)相続開始の年の前年以前に贈与により取得した財産で、贈与税の配偶者控除の適用を受けたもののうちその控除額に相当する部分

 2)その配偶者が被相続人からの贈与について贈与税の配偶者控除の適用を受けたことがない者である場合において、相続開始の年に贈与により取得した財産のうち、その財産について贈与税の配偶者控除の適用があるものとした場合にその控除額として控除されることとなる金額に相当する部分

相続税の計算方法

質問

相続税はどのように計算するのでしょうか?

答え

 民法などに定められた相続税を計算する上での財産から、非課税の財産・債務・葬式費用などを除き、これらを相続人が法定相続分により相続した場合における税率により計算されます。

 

相続税の計算の仕組み

 相続税は、被相続人の所有していた財産に対して課される税金です。したがって、相続税を計算する場合は、被相続人の遺産を合計して、それらが法定相続分通り相続されたとして、相続税の総額を計算します。その税率は超過累進税率になっており、財産を多く所有している人ほど税率が高くなります。次に、相続税の総額を、相続人が実際に取得した財産の額に応じて按分し、各種税額控除を差し引いた金額が最終的なそれぞれの相続人の負担する相続税額となります。

 

具体的な計算の流れ

①課税価格の合計額の計算

 相続税の課税対象となるのは、土地・建物・株式・その他の預金などのほとんどの資産です。被相続人の死亡により受け取る生命保険金や退職金も含まれます。

 そして、非課税財産や借入金などの債務、葬式費用を引いたり、3年以内に贈与された財産の金額を足したりして、課税価格の合計額を計算します。

②相続税の総額の計算

 課税価格の合計額から基礎控除を引き、相続人が民法の規定による法定相続分通りに相続したものと仮定して各人の税額計算を行い、それらを合計して相続税の総額を求めます。基礎控除は{5,000万+1,000万×法定相続人の数}で求めます。妻と子供3人の場合には、5,000万+1,000万×49,000万となります。養子については、被相続人に実子がいる場合には1人まで、実子がいない場合には2人までが法定相続人の数に算入されます。

 

納付税額の計算

上記において計算した相続税の総額を、実際に各相続人が相続した財産の割合に応じて按分し、各人の算出税額を求めます。この算出税額をもとにして、各種の加算や控除を行い、各人が実際に支払う金額が決まります。

「相続税の2割加算」

1親等の血族と配偶者以外は相続税額が2割増しになります。養子については原則として2割加算の対象外となりますが、平成15年度の改正により、養子縁組した孫については2割加算の適用を受けることになります。

「配偶者に対する税額軽減」

配偶者が相続した財産が16,000万までか、16,000万を超えていても配偶者の法定相続分までは相続税がかかりません。この適用を受けるには、相続税の申告が必要です。

 

この他にも、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、外国税額控除があります。

遺言による相続・遺贈

質問

遺言があった場合、相続人や相続分はどうなりますか?

答え

遺言による相続・遺贈

 遺言があった場合には、遺言に従った財産処分が行われます。民法では、遺言により、自分の財産を自分の死後も自由に処分できるように以下の制度を設けています。

 

①遺贈

 遺言により相続人以外の第三者に遺産を与える方法です。遺贈には、包括遺贈(遺産の一定割合を与えるもの)と特定遺贈(遺産のうち特定の財産を与えるもの)があります。

②相続人に対する相続分の指定

 被相続人が遺言で共同相続人の全部、または一部の相続分を定め、または定めることを第三者に委託する方法です。

③遺産分割方法の指定

 被相続人が遺言で遺産の分割方法を定め、または定めることを第三者に委託する方法です。

 

 死後の財産処分の方法としては、他に死因贈与があります。これは贈与者の死亡により効力を生ずる贈与で、両者の合意により成立する契約行為です。

 遺言は相手方のない単独行為であるため取り消すことも自由ですが、死因贈与は2者間の契約であるため、勝手に取り消すことはできません。

 

遺言書の種類

 遺言が効力を生ずるときには本人は死亡しているため、何が本人の意思であるかを明確にしておく必要があります。そのために遺言については法律で厳格な要件を定めており、これに反した場合には無効になります。

 民法では遺言書の作成方法として、次の3種類を定めています。

①自筆証書遺言

 本人が、遺言書の全文、日付および氏名を自筆で書いて押印することにより成立します。用紙の制限はありませんが、ワープロ文字や代筆は認められず、必ず自分で書くことが必要です。封印する必要はありませんが、もし封印してある場合には勝手に開封することはできず、家庭裁判所において相続人などの立ち会いのもと開封しなければなりません。

 自筆証書遺言は、本人が単独で作成でき、遺言の内容だけでなく、その存在自体も秘密にしておけるとの利点があります。しかし、厳密な法定の要件を満たさず無効となったり、偽造や紛失のおそれがあるなどの欠点もあります。

②公正証書遺言

 公正証書遺言は、遺言書を公証人に作成してもらい、かつ原本を公証人役場に保管してもらう形式の遺言です。作成には2人以上の証人が必要です。

 公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成するため正確で証拠力もあり最も安全で確実です。

③秘密証書遺言

 上記2つの遺言の中間的なもので、遺言の存在は明確にしつつ、内容を秘密にして偽造などを防止するものです。

 本人が証書に内容を記載して署名・押印します。これを封印して公証人と証人2人以上に提出し、自分の遺言であること及び住所氏名を申述します。公証人がその日付と申述を封紙に記載したあと、本人と証人と共に署名捺印して作成します。

 

家庭裁判所による検認

自筆証書遺言と秘密証書遺言の執行には、家庭裁判所の検認が必要となります。公正証書遺言は検認の必要はありません。

検認は、証拠保全の手続きであり、実質的な遺言の効力に影響を及ぼすものではありません。したがって、検認を得た遺言であっても、その内容について争うことはできますし、逆に検認を受けていないからといって遺言の効力がなくなることもありません。

法定相続人と相続分

質問

相続が起きたら、誰がいくらの財産をもらえるのですか?

答え

 遺言などがなければ、民法によって定められた相続人(法定相続人)へ定められた相続割合(相続分)により分けることになります。

 

法定相続人の範囲

 相続人になれる人の範囲は民法で定められており、これを法定相続人と言います。法定相続人は、被相続人の配偶者(配偶者相続人)と被相続人の血族関係者で一定のもの(血族相続人)に限られています。

①配偶者相続人

 正式な婚姻関係にある配偶者は常に相続人となります。しかし、内縁の妻はどんなに長く連れ添ったとしても相続人にはなれません。

②血族相続人

 相続人となれる血族関係者とその順位は次のように定められています。

 ・第一順位:被相続人の子供などの直系卑属

   (注)養子も第一順位の法定相続人となれます。

      配偶者の連れ子は法定相続人となれません。

 ・第二順位:被相続人の父母・祖父母などの直系尊属

 ・第三順位:被相続人の兄弟姉妹

 まず、第一順位の血族関係者から優先的に相続人となり、第一順位がいない場合には、第二順位となります。また、第二順位がいなければ第三順位が相続人となります。そして、第一順位から第三順位までの相続人がいない場合には、配偶者が単独で相続することになります。

 

法定相続分

 遺産の取り分のことを相続分と言います。相続分は遺言により指定することができますが、遺言がなかった場合には民法で定める相続分によることになります。これを法定相続分といい、その割合は次の通りです。

 ・第一順位:配偶者1/2、直系卑属1/2

  ・第二順位:配偶者2/3、直系尊属1/3

 ・第三順位:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

 同順位の血族相続人が複数いる場合の各人の相続分は原則として均等となります。

 (注)養子は実子と同じ相続分となります。また、愛人との間に生まれた子(非嫡出子)については、認知していれば正妻の子の1/2の相続分となります。認知されていなければ相続権はありません。

 

遺留分

 被相続人は原則として遺言によってその相続財産を自由に処分することが可能です。

しかし、愛人にすべての財産を遺贈するなど、妻子の生活をおびやかしたり、相続人間の公平を全く無視することは認められません。そこで民法では、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者・子・直系尊属)に相続財産の一定割合を留保することとしており、これを遺留分と言います。遺留分の割合は以下の通りです。

 

①相続人が父母・祖父母のみの場合:相続財産の1/3

②①以外の場合         :相続財産の1/2

 

 遺留分権者が複数いる場合は、上記の全体としての遺留分の割合に個々の相続人の法定相続分を乗じたものがその相続分の遺留分になります。

 遺留分権者は、自分の遺留分を超える遺言があったとしても「遺留分減殺請求」をすることにより、遺留分までの財産を相続することができます。

 

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