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葬儀費用を出す際に注意することは?

質問

「葬儀費用を亡くなった人の預金から引き出そうとしても出せないので困った」という話を聞きました。葬儀費用を出す際の注意点を教えてください。

答え

葬儀に係る費用としては、葬儀そのものの費用のほかに通夜や告別式での会葬者の飲食費、さらにはお坊さんへのお布施など、ある程度まとまったお金が必要になります。その金額は葬儀の大きさや戒名などによって異なりますが、まずはこの費用をどう調達するかを考えなければなりません。

一般的には喪主が負担することが多く、香典を葬儀費用に充てることもあるでしょう。

ただ、被相続人の口座からは原則として葬儀費用さえ引き出すことができなくなります。

仮に相続人のうちの一人が引き出しや解約しに来ても、そのことが遺産分割協議のときに実際に問題になったケースも少なくなく、金融機関としては慎重に対応しますので、相続が発生したことを知らないうちに引き出された場合を除き、相続が発生したことを知ったうえで預金の引き出しに応じるということは問題になるため出金させてもらえる可能性はほとんどないでしょう。(最近は、通常の引き出しもある一定額の金額以上の出金は本人確認をすることを義務付けている金融機関も多く、本人以外の引き出しは委任状がなければ応じてもらえないことも)

ですが、実務上は金融機関により対応の仕方が異なり、葬儀費用相当額は引き出しに応じる金融機関もあります。また、相続人が1人だけであったり、引き出す額が数万円程度の少額であれば実務上問題ないとして引き出しに応じる金融機関もあるようです。

相続人が葬儀費用を自己資金で工面できれば、後で問題が起こることもありません。相続人が負担した場合には、相続税の申告のときに債務控除として相続した財産から控除できます。

なお、香典は非課税とされているので、誰が取得しても相続税上の問題はありません。また、香典返しの費用も、相続税法上、葬儀費用に含まれないので相続財産から控除できません。

そして、香典を受け取る人と香典返しの費用を負担する人が必ずしも同じである必要もありません。

たとえば、子供が香典を受け取り、配偶者が香典返しの費用を負担すれば、課税されない財産を子供が取得することになり2次相続を考えれば有利になるともいえます。

葬儀費用については、「葬儀社への支払い」「飲食費」「お車代」「お布施」「読経料」などすべてについて記録し、特に請求書や領収書の出ない費用に関しての記録を忘れないようにすることが必要です。

相続税法上、葬儀費用として認められるものは、次にあげるようなものです。

 ・通夜費用、仮葬式費用、本葬式費用(飲食費を含む)

 ・遺体や遺骨の回送にかかった費用

 ・仮装や埋葬、納骨するためにかかった費用

 ・火葬場等へのタクシー代

 ・お布施、読経料

 

ただし、下記のようなものは葬儀費用として認められません。

 ・香典返し費用

 ・墓碑や墓地の購入費、墓地の借入料

 ・初七日や四十九日などの各法要の費用

土地を評価するときに気をつけなければいけないこと

質問

土地が複数あるので、評価計算をしてみようと思うのですが、気をつけねばならないことは何ですか?

答え

土地の評価計算方法は複雑な上に方法もよく変わります。細心の注意を払って行わなければなりません。実測面積と登記簿面積が異なっていたり、路線価で土地を評価するときに誤る例が多いようです。

土地の評価計算方法などは、税務署に時々通達があり、どんどん変わっていきます。補正率などはとくによく変わり、経過措置などもあって、慣れていないとわかりにくいものです。

土地評価で誤りやすいのは次のような場合です。

①実測面積と登記簿面積が異なる。

相続の申告時に登記簿謄本の面積で申告し、その後、その土地を売却し、税務署に譲渡の確定申告書を提出した際、同じ土地なのに面積が違うことが発覚するケースです。

実際には、相続税の申告のときには実測面積で申告するのが原則ですが、実際には、実測面積と登記簿謄本の面積はそれほど差がないことや、測量費が高額であることなどから、登記簿謄本の面積で申告することが多いのです。

しかし、後に売却をした際には実際の面積を調べますので、後にわかることになります。

この場合は相続税の修正申告をしなければなりません。ですから、売却する予定がある場合には、あらかじめ実測しておいた方がよいでしょう。ただ、近年測量されたものはほぼ正確であり、土地地積更正登記が行われた土地や土地分筆登記が行われた土地は正しい面積ですが、分筆後の残地が「差し引き計算」で処理されたものは、古くに測量した登記簿面積を引きずっていることがあるので、正しい面積といえない場合があります。登記所で地籍測量図を閲覧すると差し引き計算されたかどうかわかりますので、確認するとよいでしょう。

②路線価で土地を評価するときに誤る。

路線価を誤るケースには、現地調査をしていないために土地の特定を誤り、違う路線価が付されていることが多いようです。やはり現地に出向いて確認することが重要です。

できれば、相続税申告や概算をしてもらう予定の税理士等と一緒に土地を確認すればよりよいでしょう。

最近では税理士でも実測器具を用いて、簡単に測量することが多くなりました。

また、土地の特定を間違わないために、住宅地図と路線価図、さらに現地の写真を撮っておくとよくわかります。

あと、やや専門的になりますが、路線価で土地を評価するときに誤りの多い例として、①二方路線加算をしていない、②正面路線価として高い路線価を使っていない場合があります。

①は土地が細長く、表側裏側とも両方に道路に面しているケースで、このように両面に道路があるとどちら側からも土地が利用できるために有効性がありますので、計算としては加算が必要です。

②は、土地が2つの道路に面しているときには、正面路線価を決めなければならないのですが、高い道路に面している方を正面路線価と決めて、加算していくのですが、奥行価格補正率、つまり奥行きが長いか短いかで土地の評価が変わり、その奥行価格補正をした後にどちらの路線価が高いかを決めなければならないのを、路線価図に記載されている価格だけで判断し計算してしまうことにより間違ってしまうことが多いようです。

いずれにしても、税理士等に依頼し、計算してもらうことをお勧めします。

 

【ワンポイント】

専門知識が必要ですので、現地を確認し税理士等に評価計算を依頼するとよいでしょう。

納税を意識した遺言

質問

私が亡くなった時に家族がもめないように遺言を書こうと考えています。どういったことに注意すればよいでしょうか?

答え

自らの遺産の相続を生前に意思表示しておくことを遺言といいますが、遺言を残すときには、財産の分割を考えるだけではなく、分割後の相続税納付のことも合わせて考えるようにしましょう。

ご質問者がおっしゃるように「もめないように」する方法の1つに遺言があります。

遺言を書くときに気をつけるべき事は、例えば、妻に預貯金、長男に土地・建物、次男に生命保険を残す...という遺言を作成したとすれば、これは税金の面から考えると、長男の負担が極端に大きくなります。

そこで税金をどこから出すかを考えたうえで遺言を作成する必要があります。財産を単に分けるのが遺言ではないのです。

ですから、土地・建物を相続させる人には、相続税分の現金や物納用の土地、生命保険も合わせて相続することが必要です。それには事前に土地の評価も含めて相続税額のシミュレーションをしておくとよいでしょう。

おおまかな計算をしておいて納税額がいくらくらいかを知っておけば、対策を立てることができます。遺言は書き直すことができますので、状況等が変わればその都度相続税の観点から見直してみてください。

また、遺言は法律的には保護されていますが、有効な遺言を実現させる手続を理解したうえで行わなければ、せっかくの意思も無駄になってしまいます。

遺言書の一般的な決まりには次のものがあります。

 ①2名以上の人が共同で遺言することはできない。

 ②遺言する者の遺言する能力(年齢、意思能力、法律行為が出来る能力)があることが必要。

 ③最新の日付と署名のある遺言書のみが有効。

 ④遺言書に遺言執行者への報酬が記載されていない場合、家庭裁判所の判断に従う。

 ⑤遺言執行に関する諸費用、財産目録作成、裁判執行者への報酬などは相続人が負担する。

遺言は本人の意思を伝えるもので、その方法として口頭やテープに録音したものは法的な効力はありません。一般的には、公正証書遺言書と自筆証書遺言が多いようです。(公正証書遺言書・自筆証書遺言書には上記以外にそれぞれ異なった要件があります)

また、特別方式といって、緊急時に認められる特別な遺言もあります。

 

【ワンポイント】

遺言書を作成する前に、相続税の概算をし、納税額・納税方法も考慮したうえで作成しましょう。

父親が節税上準備できることとは?

質問

父親として、残る子供たちへの相続を考えてできるだけ相続税がかからないようにしてやりたいと思うのですが、生前に準備できることは何でしょうか?

答え

相続と税金は切っても切れない関係にありますが、実際に相続税を支払う人は、相続した全体の約7%と言われています。

相続税は、正味相続財産の全額に対して課税されるのではなく、基礎控除という一定の額が控除され、それを超えると課税されるしくみになっています。

この基礎控除の額は

5000万円+1000万円×法定相続人の数 で計算した合計金額です。

例えば、法定相続人が4人の場合、

5000万円+1000万円×4=9000万円 が基礎控除の額となり、相続財産がこの金額以下の場合は相続税がかかりません。

基礎控除を超える場合は、相続税を納めることになります。

そこで相続税の節税対策ですが、基本的には

①相続人の数を増やす(養子縁組をする)

②生前贈与する

③夫婦間の居住用不動産の贈与の優遇措置を利用する

④不動産を購入する 

などの方法があります。

しかし目先の節税のことだけを考えて、これらの方法を実行すると相続時のトラブルの元になったり、ケースによっては実質的なメリットのない場合もありますから、慎重に検討しましょう。

とくに不動産の購入は、不動産価格の変動によって節税効果が得られる可能性がある反面、かえって損害を被るといったリスクを含んでいることも注意しなければなりません。

また、郵便局に貯金したり、割引債を利用したり、遠隔地に預金したり...という方法で預貯金を隠そうとする人がいますが、こうした手段を使っても税務署はきちんと資産を把握することができるので、節税対策にはなりません。

ではどうすればいいか...非課税財産を活用するとよいでしょう。

非課税財産には、お墓・永代供養代金・香典・国などに寄付した財産、生命保険金や退職手当金のうちの一定額(500万円×法定相続人数)があります。

たとえば、墓地は生前に取得する場合と相続後に取得する場合とで、相続税負担にかなりの差が生じます。

最近では墓地・墓石の取得代金は数百万円以上の額になる事も多く、相続後にこれらの財産を取得しても、代金を控除することはできず、それらの取得は税金支払い後の手取りで支払わなければならないので、税金支払いとの2重の負担を強いられることになります。

いずれ取得しなければならないのなら、生前に取得することが税金対策上のぞましいでしょう。

これは父親本人がその気にならないと、まわりからは勧めることができず、元気なときにしか買えないものです。

また、ローンや未払い金などで墓地を取得したとしても、その負債相当額は債務控除の対象とはならないので注意しましょう。さらに、商品として所有しているものや、社会通念上、あまりにも高価すぎるものについては、非課税と認められないものもあります。

 

【ワンポイント】

生前に墓地、墓石などの非課税財産を取得することは節税対策に効果的です。

被相続人の口座から自動引落されているローンはどうなる?

質問

亡くなった主人にはローンがあり、口座引落で返済しているのですが、相続で口座が閉鎖された場合はローンはどうなるのでしょうか?

答え

相続が開始されると被相続人の口座は原則として閉鎖されて相続人の共有となってしまうので、そこからお金を引き落とせなくなります。そうするとその口座からローンの返済がされません。(ガス代・電気代等も同じです。)

遺産分割協議を行ってからはじめてその名義変更された口座からローンが引き落とされるので、注意が必要です。

金融機関が相続の開始を知っている場合には、顧客としては当然残高のある被相続人の口座からローンが引き落とされると思いがちです。しかし、遺産分割協議が終わるまでは引き落とされないので、これを知らずに支払いが滞ってしまうとローンの利息が増えてしまいます。ですので、金融機関に相続開始の旨を申し出た時には、ローンがある旨を伝え、返済方法等の変更手続きについてきちんと確認する必要があります。

被相続人が亡くなった日現在で残っている住宅ローンなどは、債務そのものですから、相続税の計算上、財産の価額から差し引くことができます。(通常は、住宅ローンの契約時に団体信用生命保険に加入するのが一般的です。この保険に加入していれば、住宅ローンの返済中にご主人が死亡しても、保険会社が残ったローンを融資先の金融機関に支払い、住宅ローンはすべて支払われます。
団体信用生命保険付きの住宅ローンに加入していれば相続税の計算で差し引くことはできません。もちろん、自動的に手続が行われるわけではありませんので、金融機関等にて手続が必要です)

借金のほうが財産よりも多く、債務超過となる場合には、相続放棄というう手続があります。

相続放棄をしても生命保険は遺贈財産としてもらえますが、この相続放棄は相続の開始から3カ月以内に行わなければなりません。

また、最初に申し上げた通り、被相続人の口座は遺産分割協議が整うまでの間、原則として相続人全員の共有となり、たとえ相続人といえども単独では手をつけられません。(この取扱いは不動産や有価証券も同じです。)

金融機関は本人の死亡を知った時から預貯金口座を閉鎖します。これは、一部の相続人が勝手に預金を引き出して他の相続人の権利を侵害することを防止するためです。

ですので、その口座が借入金やクレジットの引落口座になっている場合は引き落としされないため、早急に相続人全員の同意書等を作成して、閉鎖を解除したり相続人代表の口座を作る必要があります。そうしなければ引落不能による延滞金など無駄な出費が発生することになります。

預金の引き出し等には、おおむね ①遺産分割協議書 ②金融機関の指定用紙 ③被相続人の戸(除)籍謄本および相続人の戸籍謄本 ④相続人全員の印鑑証明書 などを提出しなければなりません(※金融機関により必要書類は異なります)

また、誰が借入金を引き継ぐかということについては、たとえばアパートを建てた時の借入金ならアパートを相続する人が、将来土地を売って借金を返すなら土地を相続した人がローンを引き継ぐとよいでしょう。また返済能力も重要です。

 

【ワンポイント】

遺産分割協議を終えてからでないと口座からローンは自動引落されないので、必ず変更手続き方法などを早めに金融機関・借入先に確認しましょう。

 

 

子供の納税資金を母が立て替えたときに注意することは?

質問

主人の相続の際、子供が土地を相続したため納税資金が足りず、子供の納税資金を母の私が立替えました。注意しておかないといけないことはあるのでしょうか?

答え

母親(ご質問者)が子供に貸した現金(納税資金)は貸付金となります。2次相続のときに貸付金が残っていると、貸付金は母親(ご質問者)の財産と見なされ、相続税がかかるので注意しなければなりません。

万が一、母親が亡くなった場合、この立て替えた納税資金=貸付金も相続財産になり、相続税がかかります。こうなると二重に税金を取られたように感じます。

父親と母親が続けて亡くなった場合、税務署は前回の相続税を誰が支払ったのかを調べます。

親子でも現金の授受があった場合には、それが贈与なのか貸付なのかをはっきりとさせておくべきです。いちばんよいのは契約書を取り交わし、金銭消費貸借契約なのか贈与契約なのか、文書でお互いの意思を確認しておく必要があります。書類がないと、貸付なのか贈与なのか不明になり、税務上の取扱いが難しくなることもあります。

貸付が贈与と決定的に違うのは、返済してもらうということです。それには貸す相手に返済能力がある事が絶対条件となります。ですから親子でもまったく返済能力のない人に、貸した場合には贈与と判断される場合があります。

贈与は、贈与者が自分の財産を無償で与える意思表示をし、受贈者がそれを受諾することをいいます。つまり、贈与は一種の契約であり、受贈者が受諾しなければ贈与は成立しません。

そのため、受諾の意思を法律的に表現することが出来ない赤ちゃんなどへの贈与はできません。

遺言によって遺産を譲る遺贈は、受諾者の意思表示をしなくても成立しますので、一般にいう贈与にあたらず、相続として扱われます。

 

【ワンポイント】

納税資金を立て替えた時は、「貸付」ならば「金銭消費貸借契約書」を、「贈与」ならば「贈与契約書」を作成しておくこと。贈与は、贈与者が自分の財産を無償で受贈者に与える意思表示をし、受贈者がそれを受諾することをいうので、受贈者が受諾しなければ贈与は成立しません

 

子どもの納税を意識した遺産分割とは

質問

妻と子供がいます。子供の納税を意識した遺産分割ができるように、遺言を用意しようと思っています。どのようにしたらよいでしょうか?

答え

一般的に、1次相続のときに、現金預貯金と土地がある場合、母親がお金を相続し、子供が土地を相続することが多いようです。これは、現金預貯金を母親が受取った方が今後の生活の為にも精神的にもいいと考えられます。

ですが、配偶者の税額軽減があるので母親は相続税がかからず、子供だけ相続税を支払わなければならないというケースも少なくなく、子どもが土地だけを相続した場合、相続税を支払うことが出来ません。とくに物納したくない土地を子供が相続する場合には、土地と相続税分くらいの預金を相続するのがベストだと言えるでしょう。

また、土地がいくつかある場合には、物納したい土地は子供達が相続し、物納したくない土地は配偶者に分けた方がよいでしょう。それは、相続税は子供たちが納めるので、物納申請のときに物納したくない土地を取られないで済むからです。

たとえば、物納したいと申し出た土地に対して、万が一、税務署が「その土地はあまりいい土地ではない。もっといい土地があるのではないか?」と言ってきても、「いい土地は母親のもので、納めるのは子供だから」ということもできます。

物納したい財産があるけれども現金もあるという場合には、税務署からは、「現金を先に納めなさい」と言われます。そこで父親が亡くなった1次相続の場合、現実には母親がお金を取り、子供たちはお金がなくて物納すると税務署への申請は通りやすくなります。

また、元気なうちに土地を売却して現金預金に替えておくなどの準備をしておくのも1つの方法です。

これら上記のことをふまえて税理士と相談し、相続税のシミュレーション計算してもらったうえで、遺言書を作成されるとよいでしょう。

 

【ワンポイント】

子供に土地を相続させる場合は、その土地を物納させたくなければ相続税相当分の現金も合わせて相続させます。また、物納させたい土地がある場合は、その土地は子供に相続させるとよいでしょう。

母親と同居していない子供たちが行う遺産分割

質問

主人が亡くなり、妻の私と、成人し独立して離れて暮らす子供達2人がいます。財産は自宅と多くない預貯金だけなので、子供達は「財産は全て母さんが相続すればいい」と言います。いくらかは金銭で子供達に分けたいと思っているのですが、どうすればいいでしょうか?

答え

最近は父親と母親の二人暮らしで、子供達は同居せず、それぞれ家を構えているというケースが増えてきました。

やはりこの場合はご質問者のように、母親が全ての財産を相続するケースがほとんどのようです。

しかし「いくらか金銭で子供達に分けたい」ということは、「はんこ代」を渡すことになります。

はんこ代は遺産分割協議書に明示しておくことが必要です。もし記載せずに相続後にはんこ代の受け渡しが発覚すると、はんこ代が遺産の代償分割として支払われたと認められず、贈与されたとみなされる場合があり、遺産の総額にもよりますが、一般的には贈与税の方が相続税よりも高く、基礎控除が少額なので金銭的にはかなりの損失が予想されます。

ですから、はんこ代を支払ったら、きちんと遺産分割協議書に記載するようにしましょう。

また、母親が全てを相続した後は揉めやすいということにも注意しましょう。

母親がいるときに遺産分割した方が、母親の遠慮があるため、もめごとは起こりにくいものです。

しかし、母親がすべて相続し、その後また母親の相続(2次相続)が発生したときに、遠慮する人がいないため、子供たちは自分の意見を強く主張し、もめるケースが多いのです。

その対策のためには遺言をしておいた方が良いでしょう。もらう側が話し合って決めるよりは、渡す方がルールづくりをしたほうが、もめにくくなります。

 

【ワンポイント】

父親の遺産を母親がすべて相続した場合は、子供たちが揉めないように遺言書を作りましょう。子供達だけが相続人になると、それぞれの主張が強くなりもめるケースが多くなります。

生命保険は納税資金だけでなく、感謝のメッセージにも。

質問

生命保険を納税の為に利用する人が多いと聞きました。本当ですか?

答え

生命保険を納税の為にと考える人は確かに多いようです。

しかし、生命保険は受取人を指定できるので、受取人に対して感謝のメッセージをおくる方法としても非常に有効です。

ひとつ例を挙げますと、長男が実家で親と同居し、長女は嫁いでいる家庭があり、父親が亡くなった際、長女を受取人にした生命保険がかけられていることがわかり、この保険の存在は家族全員が知らなかったことでした。

長女は保険会社を通じて、「亡くなった父親が『心やさしい長女のために何かを残してあげたいが、土地と家は妻と長男に残すとそれ以外はさほど財産もない、それでは長女がかわいそう』ということで生命保険に加入した」といういきさつを聞き、保険金を受け取れたことよりも、父親の自分に対する心遣いに大変感激した...という例があります。

生命保険というと納税対策の為に加入するというイメージが強く、実際、相続税を納付するための財源として利用されている場合も多数ありますが、このように特定の人に対して自分の感謝のメッセージを伝える方法にもなります。

とくに生命保険は他の遺産と異なり、遺産分割協議の対象とはならず、直接受取人の手に渡るので、自分の遺志を確実に伝えるための有効な手段となります。

生命保険にも相続税が課税されますが、誰が掛け金を負担していたかによってその課税対象は変わります。

例えば、被相続人もしくは被相続人の勤務先が掛け金を全額負担していた場合には、保険金全額が相続税の課税対象となりますが、被相続人が掛け金の一部を負担していた場合にはその負担部分に対応する保険金のみが課税対象となります。

ただし、保険金の受取人が相続人であるときには、500万円に相続人の人数を掛けた金額の範囲内で非課税となります。

また、保険料を支払った人が被相続人以外の人で、被保険者が被相続人の場合は、受取人が保険料を支払った人なら「所得税」、支払った人でも被相続人でもない別の人が受取る場合は「贈与税」の対象になります。

 

【ワンポイント】

生命保険は遺産分割協議の対象にならないため、自分の遺志を確実に伝えたい場合や納税資金や当面の生活資金に残したい場合にも有効な手段です。(預貯金は、遺産分割協議が必要な為、時間と手間がかかります)

遺産分割協議書は分けて作成することも可能

質問

遺産分割協議をしているのですが、土地の部分は分割方法が決まりました。しかし預貯金についてはまだ決着していません。土地は売却したいので土地の部分だけ遺産分割協議書を作りたいのですが可能ですか?

答え

遺産分割協議書はいくつかに分けて作成することも可能です。土地を売却して納税資金に充てるならば、納付期限に間に合うよう、土地に関する遺産分割協議書は早めに完成させるといいでしょう。

遺産分割協議書はいくつかに分けたとしても問題はなく、土地を売却することで全相続人が同意しているのならば、土地に関する遺産分割協議書を取り急ぎ完成させたのち、その他の遺産についての分割を時間をかけて行うことが可能になります。

このように部分的に遺産分割を行うと、土地を早い時期から処分することができるので、10ヵ月という期限内に、土地の売却代金を相続税の納付に充てることができます。

反対に全ての遺産についての遺産分割協議が終了するまで土地の売却を待っていたら、10ヵ月という期限内に土地を売却することは難しく、その場合には相続税を延納したり、もしくは土地の売却をあきらめて物納する必要が生じるかもしれません。

延納した場合には相続税に利子が加算され、土地を物納する場合でも、土地は取引価格よりも低額な相続税評価額で評価されるので、思った以上に安く見積もられてしまうかもしれません。

延納・物納のデメリットを考えれば、いつか処分する土地はできるだけ早い時期に処分しておくと無駄がありません。とくに処分する土地の現在取引価格と相続税評価額の差が大きい場合、土地を処分した代金で納付を行う方が金銭的に非常に有益です。

遺産を数回に分けて分割することに対して、誰かの思惑があるのではないかと不安を感じる人も多いと思いますが、分割を分けて行うことにはこのような意外なメリットがあるので、遺産分割を行う際の良い判断材料となるかもしれません。

ところで、遺産分割協議終了後、相続した土地の権利を相続人全員が有している場合には相続人全員を権利者として共有で登記しているケースと、各相続人の取得分を登記した単独所有のケースがあります。

単独所有の場合には土地をあらためて測量し、各人に正確に配分する必要があり、この作業には費用が発生します。土地の処分は、共有・単独所有どちらでも問題なく行えるのですから、処分することが決定しているならば測量作業の必要がない共有の状態のまま処分した方が金銭的な節約になります。

 

【ワンポイント】

土地の売却には時間がかかるので、売却して納税資金に充てるのならば、先に売却する土地の遺産分割協議書を作成するとよいでしょう。

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