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代償分割と普通の分割は税金は同じ

質問

代償分割と普通の分割では税金の額は変わりますか?

答え

代償分割でも普通の分割でも相続税の額に変わりはありませんが、代償分割の場合、いわゆる「はんこ代」をもらう側は現金でもらえることがほとんどで、相続税を払う際に便利という特徴があります。

普通の分割とは、相続人全員で協議を行い遺産を分割して相続する方法ですが、代償分割とは相続人のうち誰か一人が全ての財産を相続し、他の相続人に対して相続分に見合う金銭などを支払う方法です。相続税の総額は課税遺産総額によって決まるので、分割の方法からは全く影響を受けません。

ただし、代償分割の場合には、同居している相続人や被相続人の事業を継ぐ相続人が遺産を一括して相続することが多く、非同居の相続人は大抵相続分に相当する現金がもらえることになります。相続分を現金でもらえる場合、そのなかから直接相続税を支払うことが可能なので、代償分割は現金を受け取る側にとっては大変ありがたい遺産分割の方法です。

反対に、現金を支払う側...つまり同居していた相続人や事業を継ぐ相続人には非常に重い金銭面での負担がかかるのが一般的です。代償分割が行われるのは、分割しにくい農地や事業用不動産が主な遺産であることが多く、すでにそれらを利用して生業を営んでいる場合がほとんどだからです。

このときには土地や不動産を売却して現金化するわけにもいかず、他の相続人に支払う現金と自分で支払う相続税について、自らの収入や財産ですべてまかなわなくてはならず、代償分割で現金を受け取る立場の人は、支払う側の重い経済的負担を理解する必要があるでしょう。

また、代償分割以外の普通の分割にもいくつか方法があり、例えば

 残された物品などを相続人に振り分ける現物分割

 遺産を売却してその代金を分割する換価分割

 分割しないで全相続人が共同で保有する共有

という方法も遺産相続の方法として考えられます。

遺産の内容や相続人の状況を考えて分割協議をしましょう。

 

【ワンポイント】

代償分割と普通の分割では税額に差はありませんが、現金を渡す側には重い経済的負担があるということを理解しましょう。

相続税には「連帯納税義務」がある

質問

私は相続税を完納していますが、他の相続人が相続税を払えなかった場合、私がその滞納している相続税を負担しないといけない場合があると聞いたのですが本当ですか?

答え

相続税は、相続により取得した財産の価額を限度として、他の相続人が納付すべき相続税額について連帯して納付しなければならない「連帯納税義務」(相続税法34条1項)があります。

したがって、この制度に基づき、相続人の一人が相続税を滞納した場合には、税務当局が他の相続人にその納付を求める場合があります。

そして他の相続人にその納付を求める場合には、税務署から連帯納税義務に関する通知が送付されます。

ただし、これは税務当局が納税の義務を有する本人の資力を調査するなど、本人に相続税を支払わせる努力をしたうえで、それでも納税が不可能という判断を下したときにのみ、相続税を回収する最終的な手段として発生する義務です。ですから相続人のうち誰か一人が相続税を納めなかったからといって自動的に支払いを要求されることはありません。

たとえば、土地や建物を財産として相続したが、相続税を支払うための現金がないので、他の相続人に相続税を肩代わりしてもらいたいという理由が認められることはあり得ません。その場合には税務当局はまず土地や建物の差し押さえを行います。

連帯納税義務が発生するほとんどの場合は、「遺産は相続したけれど使ってしまい、相続税を納められなくなってしまった」というケース、もしくは、「もともとあった借金の返済に相続した財産を充ててしまった」というケース、「相続人の一人が延納許可を受けて20年間の年賦による分割納付を行っていたものの、その後の資力の状況等の変化により、分割が困難となった」ケースなどです。

このように相続税の支払いに充てる財産が全くない場合のみ、税務当局も本人に相続税を支払う資力がないことを認め、その他の相続人が連帯納税の義務を負うことになります。

このように連帯で納税の義務を負う人のことを連帯納税義務者と呼び、共同で財産を相続した人は自動的にお互いが連帯納税義務の責を負うことになります。

ただし、連帯納税義務によって連帯納税を行う場合、一般の相続税の納付とは違って、延納が認められないことに注意が必要です。

また、連帯債務や連帯保証が行われたときと同様、連帯納税が行われた場合にも、連帯納税をした人はもともと税金の支払い義務を有していた相続人本人に対して「求償権」をもつことになります。

連帯債務や連帯保証の場合には、この求償権を放棄することで連帯債務・連帯保証の責を課せられた人からもともとその責を負っていた人に対して贈与が行われたとみなされ、その対価に応じた贈与税が課せられます。しかし、「連帯納税義務」の場合には、求償権を放棄しても贈与とはみなされないという特徴があります。ですから相続税を支払わなかった本人に対して贈与税が課せられることはありません。

ただし、もしも相続税を支払う資力があるにも拘らず、連帯納税義務者に税金を肩代わりしてもらい、連帯納税を行った人が求償権を放棄した場合には贈与とみなされて、それに見合った贈与税が課されます。

 

【ワンポイント】

自分以外の相続人が延納許可を得て分割納付している場合は、相続税の申告期限から相当期間経過した後に連帯納付義務の履行が求められる場合もありますので、留意が必要です。

「はんこ代」と遺産分割協議書

質問

父の相続で、実家の事業を継ぐ兄から「はんこ代」として現金を貰うことになりました。兄には「遺産分割協議書に記載しない方が得では?」と言われました。本当にそうなのでしょうか?

答え

「遺産分割協議書に記載しない」ということは「裏で取引する」ということでしょうか?それはお勧めできません。なぜなら、支払われない可能性が高く、発覚した際の金銭的負担が大きくなるので、裏で取引するリスクがとても大きいからです。

代償分割の場合、一人の相続人が一括して全ての遺産を相続しますが、相続税については一人が全額支払うわけではありません。代償分割として相続分に相当する金銭を支払われる相続人についても、支払われた金額に応じて相続税が徴収されます。

代償分割の際に相続人に支払われる金銭を、いわゆる「はんこ代」と呼ぶのですが、この「はんこ代」については、「誰から誰宛にいくら」が代償分割として支払われるという具体的な内容が遺産分割協議書に記されます。

この遺産分割協議書の内容に基づき相続税申告書を作成し、税務署はそれぞれの相続人から相続分に相当する相続税を徴収するのですが、はんこ代を遺産分割協議書に記載しなければ、相続税の申告書にも記載しないと思われますので、そうなると相続税を徴収されずに済むのではないか?という考え方もあります。相続税の徴収は免れるかもしれませんが、はんこ代を協議書に記載しないことはお勧めできません。

まず一つ目の理由として、正式な書類を残しておかないとはんこ代を支払ってもらえない可能性が高いからです。実際、はんこ代を支払う側(今回の場合はお兄様)は協議書にはんこ代を記載することで相続税の負担を分担できるはずです。それにも拘らず、協議書にはんこ代を記載しないのには何か理由があるからだと疑わざるを得ません。

はんこ代を裏で取引することをお勧めできない二つ目の理由として、発覚した場合の経済的負担があげられます。

はんこ代が発覚した時にすでに使ってしまっていた場合、いきなり多額の税金を請求されるのは金銭的に非常に負担となります。(本税の他に加算税や延滞税なども請求されることになる場合も...)

さらに問題なのは、相続後にはんこ代の受け渡しが発覚すると、はんこ代が遺産の代償分割として支払われたと証拠がないので認められず、「兄から贈与された」とみなされ、はんこ代を受取った者(今回の場合はご質問者)が贈与税を支払わなければなりません。

遺産の総額にもよりますが、一般的には贈与税の方が相続税よりも税率が高く、基礎控除額も少額なので金額的にはかなりの負担が予想されます。

ですので、はんこ代を協議書に記載しておかないことで、このような大きなリスクが伴うことを忘れないで下さい。

 

【ワンポイント】

金額の多少に関わらずきちんと記載することが、実は一番リスクが少なく確実です。家族のトラブルを避ける為にも、必ず記載しましょう。

相続税が払えなければ相続しない方がいいの?

質問

「相続税が支払えないなら相続しない方がいい」と言われました。本当ですか?

答え

基本的には相続税は、相続した遺産の中から支払います。たとえ事前に財源がなかったとしても、代償分割などで遺産を現金でもらう方法もあるので相続をあきらめる必要はありません。

相続税額は、法定相続人が法定相続分を相続すると仮定し、それぞれの法定相続分に規定の相続税率をかけたものを合計して算出します。

全体として納めるべき相続税額が計算できたら、相続人はそれぞれ相続する遺産の割合に応じた相続税を支払います。つまり、遺産を多くもらった人は多額の相続税、少なくもらった人は少額の相続税を、相続した遺産の中から支払うこともできるので、相続する前に相続税が支払えないことを心配して相続を放棄するのは間違いです。

実際、現金を持たない人が土地を相続した場合には相続税を支払うことは困難です。ただし、他の相続人より代償分割などで土地の代わりに現金をもらえば、その中から相続税を支払うことは十分可能です。

「相続税を支払えないなら相続をあきらめろ」というのは遺産分割の際の駆け引きとしてよく使われる言葉です。言われた側もそのことを理解して過敏に反応せず、反対に「相続税が支払えるように現金でもらいたい」という意志を表示してこちらからも駆け引きを行うぐらいの気持ちを持つことが必要でしょう。

相続税の総額を計算する場合には、事前に正味の遺産額を計算し、そこから基礎控除額(5000万円+相続人数×1000万円)を差し引いて相続税の対象となる「課税遺産総額」を出しておくことが必要です。

 

【ワンポイント】

基礎控除額を超えなければ、相続税額も発生しません。きちんと遺産の総額を確認し、課税遺産総額を算出しましょう。

遺留分の請求には予想以上に時間がかかる

質問

同居はしていませんでしたが、両親の近くに住み、精神的な支えであり続け、一番両親と心が通じ合っていたと思うのですが、今年亡くなった父の相続は、同居する長男が実際には多く相続することになり、納得できません。他のきょうだいは私の気持ちも分かるが、家を守る長男を困らせたくないといいます。遺留分を請求するのは間違いですか?

答え

ここのところ立て続けに「遺留分」について説明をしていますが、何度も言うように遺留分の請求は権利であって義務ではありません。

当然、ご質問者にも権利が認められていますので間違いではありませんが、もし残された母親が長男家族と同居しているとされたら、ご質問者の主張はご長男ばかりでなく「心が通じ合っていた母親」も困らせることになってしまいます。

同じような状況で、権利を行使したい人は行使しますが、遺留分を放棄する人も多くいます。

遺留分を放棄する理由は、「被相続人の遺志を尊重したい」「親の面倒をみてくれた人に遺産を多めに配分されるようにしたい」など、心情的なものが考えられます。

遺留分の請求には、予想以上の労力と金額、そして時間がかかるという現実的な問題も遺留分放棄の大きな理由となっています。

実際に遺留分の減殺請求をする場合には、弁護士を立てることが多いようです。まずは自分の遺留分を侵害している相手に内容証明郵便で請求するところから始まり、その後、遺留分を補うために何をもらうのかを決めることとなるのですが、実際には減殺請求に決着がつくまでには数か月~数年という予想以上に長い年月がかかることになることが多いようです。

弁護士を立てれば相手側も弁護士を立てるでしょうし、その料金負担だけでもお互い決して少なくないと思われます。遺産の相続というと遺産総額の何分の1がそのまま相続できるようなイメージがありますが、実際に相続できるのは、見かけ上の金額から相続税や被相続人の負債を差し引いた額に過ぎず、そのこともふまえ、それほどまでの労力と金銭・時間を使い、周りの人に迷惑をかけてまでも遺留分の減殺請求をする価値があるのかどうか、冷静に判断してもらいたいところです。

遺留分の減殺請求はかなり認められやすい権利ではありますが、弁護士をたてるとなればそれなりの費用が双方に発生することになり、きょうだい関係がかなり悪化してしまうことになりかねませんので、なるべくごきょうだい間で解決する努力をされることが大切だと思います。

 

【ワンポイント】

一度自分の気持ちを他の相続人にざっくばらんに話してみることが大切です。遺留分の請求には予想以上に労力・金銭・時間がかかりますので、冷静に判断しましょう。

遺留分の放棄とは?

質問

相続時精算課税制度を利用し、長女に多額の住宅購入資金を援助しました。しかし、同居する長男には相続で自宅や他の財産を残したいと考えています。そんな時に「遺留分の放棄」という言葉を聞きました。詳しく教えてください。

答え

生前に「相続の放棄」をすることは法律上認められていませんが、遺留分については生前に放棄することが認められています。

遺留分の放棄」とは、簡単にいえば、「将来相続が発生して自分の遺留分を侵害している遺言があっても、遺留分の減殺請求をしない」というものです。

ですから、親(今回の場合はご質問者)が生前に相続時精算課税制度を活用して子どもにまとまった金額の贈与を行い、その後、その贈与を受けた子供(今回の場合はご質問者の長女)に「遺留分の放棄」をさせておけば、いざ相続が発生した際には、生前に贈与を受けた子供は、自分の遺留分が侵された遺言書が出てきても、その遺留分の減殺請求権を行使することができなくなるということです。

この「遺留分の放棄」の手続ですが、家庭裁判所へ遺留分放棄許可申し立てを行い、審判を受けることにより可能となります。

ただし、この許可にあたっては、放棄を強要されることなく、あくまでも本人の自由な意思によって相当な理由があることが必要となっています。

そこで、具体的に許可を受けるための動機として次のようなことが挙げられます。

 ①生前に多額の贈与を受けている。

 ②一次相続では財産を取得するが、二次相続では放棄する。

などがあります。

最後に注意点です。いくら生前に遺留分の放棄の許可を受けたとしても、遺言書を残していなければ、この許可の効力はなくなり、法定相続分を主張することができます。

ですので、この遺留分の放棄を確実とするためにも、ご質問者はその放棄をさせたい子供(長女)の相続分をゼロと指定した遺言書を残しておけば、より確実となります。

 

【ワンポイント】

精算課税制度とセットで遺留分の放棄をすれば、生前相続はより確実に実現できますが、必ず遺言書を残しておくことが条件です。

 

遺留分の請求は義務でなく権利

質問

先日父が亡くなり、財産のほとんどを「同居し家を継ぐ長男に」というような内容の遺言がありました。別居し家業を継がない次男の私に「遺留分の請求」はできるのでしょうか?

答え

「遺留分」とは前回もお話しした通り、法定相続人(被相続人の兄弟姉妹は除く)に認められている最低限の相続分のことです。

被相続人の遺志の尊重と法定相続分の平等性のバランスをとる為に作られた制度で、「遺留分を請求する権利」はありますが、その権利を行使するかどうかは個人の判断にゆだねられます

被相続人の遺産は、基本的には法定相続の制度で相続人に平等に分割されることになりますが、遺言書がある場合は、遺言書が優先され、遺言書通りに遺産分割が行われます。

これを指定分割といい、被相続人の「家を守ってくれる長男(長女)や自分の面倒をみてくれた人に多くの遺産を残したい」などの自由な遺志を尊重する仕組みですので、この方法で遺産相続した場合には法定相続分よりも少ない割合で相続することがあります。

たとえば遺言書の「全ての遺産を長男に相続させる」という内容も有効になり、この場合には長男以外の法定相続人は遺産を全く相続できないことになってしまいます。(ご質問者はこれに近い状態だと思われます)

これではあまりにも不平等ではないかという観点から「遺留分」という制度が誕生しました。

遺留分は、法定相続人それぞれに法定相続分の2分の1にあたる遺留分が認められることになっています。

ただ、大切なのは遺留分の相続はあくまでも権利であり義務ではないということ。

例えば、同居することによる経済的な負担や介護等に伴う体力的・精神的苦痛の対価などの個々の対価については法定相続分には反映されていないのが現状です。

また、遺言書には被相続人の同居して面倒を見てくれた人に対する感謝のメッセージなども含まれています。

それらのことも考え合わせ、あくまでも自分の遺留分を請求するのか、それとも被相続人の遺志を尊重して遺留分を放棄するのかは、個人の判断によるところです。

遺留分の請求は前回でもお話したとおり、内容証明郵便にて通知(請求)しますが、相手が請求に応じないときには家庭裁判所の調停に委ねることになります。

 

【ワンポイント】

権利を行使するかどうかは個人の判断です。期限内であれば請求できますが、被相続人の遺志や今後のご家族(ご兄弟)の関係や状況を考慮し判断をしましょう。

遺留分の計算について

質問

「遺留分」という言葉を聞くのですが、どのような意味ですか?

答え

「遺留分」とは、「被相続人の相続財産について、法律上最低限保障される割合」です。

また、この遺留分が保証される法定相続人を「遺留分権利者」といいます。

遺留分の計算の基礎となるのは、もちろん被相続人の相続開始時における財産(遺贈財産を含む)の価額です。この金額に次に示すものを加算し、債務の全額を控除して求めていきます。

 ①相続開始前1年以内の贈与。ただし、1年より前に当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた贈与も含みます。

 ②婚姻・養子縁組のためや生計費として受けた贈与

 ③みなし贈与財産など。

 

ちなみに、遺留分権利者が遺留分を侵害された場合に、遺産を取り戻すことができる「遺留分減殺請求権」があります(民法第1031条)。

この手続きとしては、まず内容証明郵便にて 「自分の遺留分が侵害されたので、その遺留分の減殺を請求する」旨を相手方に通知することが必要です。

ただし、①侵害されたことを知った日から1年を経過

     ②あるいは相続開始から10年経過していた場合は知っていなくても行使していない

と、その権利は時効で消滅します。

 

<各相続人の遺留分>            (相続財産に対する各相続人の遺留分)

  配偶者のみ             ・・・・ 2分の1      

  配偶者と子(代襲相続を含む)  ・・・・ 配偶者:4分の1  子:4分の1

  子のみ(代襲相続を含む)     ・・・・ 2分の1

  配偶者と父母(直系尊属のみ)  ・・・・ 配偶者:3分の1 父母:2分の1

  父母(直系尊属のみ)       ・・・・ 3分の1 ※兄弟姉妹には遺留分はありません

 

【ワンポイント】

もし、自分の遺留分が侵害されたときは、1年以内に減殺請求を必ず内容証明郵便で行います。

円満相続のポイントは「遺言書」

質問

最近よく「遺言書」という言葉を聞く機会が増え、小規模ですが会社を経営していますし、会社のことを含め作成した方が良いのではと思うようになりました。遺言書を作成するとどのようなメリットがあるのか教えてください。

答え

相続におけるトラブルの原因の中で、「被相続人の死後、相続財産をどのように分けるのか?」ということが大部分を占めます。

そこで、残された家族が相続財産をめぐってもめることがないよう遺言書を生前に作成しておくことは必要だと思います。

ご存じのように、遺言書とは、自分の死後における財産の処分について意見を書面にしたものです。日本では、財産の処分などの権限は所有者が持っており、それは生前、死後を問いませんので、遺言書が何よりも優先されます。

そのため、遺言書がある場合には、遺留分を侵さない限り、遺言書どおりに遺言書で指定された人が指定された財産を相続することになります。

例えば、遺言書において「長男には自宅、次男には預金を相続させる」と指定しておきますと、遺言書どおりに相続財産を分割することになります。これにより相続財産の分割がスムーズにいき、相続財産をめぐるトラブルを事前に防ぐことができます。

トラブルが起こると相続税申告の期限までに分割が決まらずに、配偶者の税額軽減などの特典が適用できないケースも出てくることから、あらかじめ遺言書にて相続財産の分割が確定していますと、それらの特典が適用でき、節税にもなります。

また、ご質問者は会社経営をしているということですので、例えば自分の会社を長男に継がせたいと考えている場合には、遺言書により会社にかかわりのある財産を長男に相続させることを意思表示しておけば、スムーズに長男に事業承継を行うことが可能となります。

相続をめぐるトラブルの原因は、財産を残したことが原因ではなく、その残し方に原因があることも多いと言えますので、残された家族が仲良く暮らしていくためにも、円満相続のポイントである遺言書を作成することは、財産を残す人の最後の責任といえるかもしれません。

 

【ワンポイント】

個人の一生の決算を行う意味においても、遺言書は作成しておき、残された遺族の方々が円満に生活できるようにしておくのも、「人生最後の仕事」です。

生前相続で円満な相続

質問

子どもに住宅購入資金としてまとまった贈与を予定していますが、残った財産はなるべく妻に残してやりたいと思っています。 妻に贈与後の財産を残すには、どうすればよいでしょうか?

答え

「生前相続」をご提案します。

「生前相続」とは、わかりやすくいえば、相続時精算課税制度...いわゆる「2500万円の生前贈与」を使って、財産を子へ贈与して財産分けを生前に行ってしまい、その後、その贈与を受けた子が生前に親の相続に関して「遺留分の放棄」をして、相続時に関与しないことです。

「遺留分の放棄」とは、相続人としての最低限の権利を家庭裁判所に対して、生前に放棄の申述を申し立てることです。

ただし、一度申し立てると撤回はできません。

今までは相続が発生して、遺言書があればそれに基づいて相続したり、あるいは遺産分割協議で財産分けをしていましたが、生前に遺産分けをしてしまうことで、親が安心するだけでなく、生前に子供に贈与をすることによって、子供に感謝されるケースもあるのです。

例えば、それは住宅ローンを抱え、かつ、教育費の負担が重い40歳代から50歳代の子供たちなどの場合です。

この子供たちが、何千万円もの贈与を受けて、住宅ローンや教育費の負担が軽くなれば、どんなに喜び、感謝することでしょう。

ご質問者も、住宅購入資金としてまとまった贈与...ということですので、子供には大変ありがたい贈与だと思います。

こうした生きたお金の使い方をすることによって、親と子供の家族の絆が強く結ばれ、円滑な相続が実現できると思います。

しかし、相続時精算課税制度は、親から子への贈与ですから配偶者には適用されません。

ご質問者がおっしゃるように、奥様については、住む家や老後の生活費が必要となりますが、遺言書が無ければ、遺産分割協議が必要になり、子供がさらに財産を要求する可能性もないとは言えません。

やはり遺言書を残しておくことが必要です。

ただし、遺言書を残せば万全かといいますとそうとは限りません。先にも述べましたように、子には生前に贈与をして遺留分を放棄させておき、配偶者には遺言書を残しておけば、円満な相続が実現できるでしょう。

 

【ワンポイント】

元気なうちに「生前相続」をすることをお勧めします。その際、「遺留分の放棄」をさせておくことがポイントになります。

 

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