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相続人の1人が海外在住しているときは

質問

父が死亡し、相続人は私と妹の2人で、妹はアメリカ在住です。妹とは電話や一時帰国により、遺産分割協議の内容には合意できています。これから遺産分割協議書を作成するのですが、手続するにはどうしたらよいのでしょうか。

答え

通常、遺産分割協議書に基づき、不動産の相続登記や金融機関の預貯金の名義変更や解約手続をしますが、遺産分割協議書には各相続人の住所・氏名を記載し、実印を押印します。そして、それらの記載が正しいという証明に印鑑証明書を添付することを求められます。

 

印鑑証明書は、実印を登録し、市町村役場等で発行してもらう事ができるのですが、海外にはこのような制度がないので、海外在住の方は印鑑証明書を利用することができません。そのため、これに代わるものとして、「在留証明書」「サイン証明書」という書類を取得する必要があります。

 

ただし、「在留証明書」は下記の3つの要件を満たしていれば、現地の日本大使館または領事館に申請すれば取得することができ、海外在住者の現住所を証明することができます。

  ①申請者が日本国籍を保有

②在留届が提出されていること

③3カ月以上現地に滞在し、住所が公文書等で明らかであること

 

そして「サイン証明書」も同じく現地の日本大使館または領事館で発行してもらえます。

しかし、この書類は、遺産分割協議書の内容に合意・署名したのが自分自身であるということを証明する為のものですので、発行を依頼するときは、遺産分割協議書を日本大使館等に持って行き、そこの係官の前で署名・拇印の押印をするのです。それが本人の署名と拇印であることの証明として、係員が「サイン証明書」を発行してくれます。そして、そのサイン証明書は、遺産分割協議書とつづられ割印されます。

 

これらによって、印鑑証明書がなくても本人確認の証明は可能です。

 

 

【ワンポイント】

海外在住者は印鑑証明書が取得できませんが、「在留証明書」「サイン証明書」を現地の日本大使館等で発行してもらうことにより、印鑑証明書の代わりになります。

 

遺留分を放棄したい

質問

数年前に父より土地の贈与を受けていますが、最近、父から遺留分を放棄するように頼まれました。どのような手続が必要なのでしょうか。また、もし遺留分を放棄した後に私が父より先に死んでしまった場合は、どうなるのでしょうか。

答え

相続人のうち、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があります。

相続開始前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要になります。一般的に、相続開始前の遺留分放棄は、遺言や贈与などによって被相続人の財産を特定の人に集中させることを実効させようとして使われています。ですが、遺留分の放棄は、放棄者がその効果についてよく理解していなかったり、放棄者の意思に反して行われる危険もあることから、裁判所の許可の審判が必要となります。

 このため、許可の審判では、放棄者の意思を確かめるだけではなく、放棄することに合理的な理由があるのかなどについても判断され、その審判では理由によっては却下されることもあります。

申立てする際に記入する「遺留分放棄の許可審判申立書」には「申立ての実情」という欄があり、今回のケースであれば、放棄者が土地の贈与を受け所有権移転登記等をした事実(登記した所在・地番・地目・地積・金○○円相当の価値がある等)を記載することにより、放棄の合理性を示します。

他にも、例えば、他の相続人と比べ高額の学費や結婚費用をもらったとか、多額の借金を返済してもらったこと、住宅購入費用として多額のお金を援助してもらったことなどもその理由になると考えられます。

なお、この許可決定がされた後、放棄者はその許可の取り消しを求めることもできます。しかし、この場合も申立てすれば必ず取り消されるというものではありません。

また、遺留分の放棄は、相続人の地位を失うものではありません。ですから、被相続人の死亡時にある遺言の対象とされなかった財産については、相続人として分割請求ができます。

 

そして、「もし遺留分を放棄した後に私が父より先に死んでしまった場合」ですが、代襲相続人(今回ではご質問者の直系卑属=ご質問者の子・孫・曾孫...)は被代襲者(今回ではご質問者)が生存していたなら取得したはずである以上の権利を取得することはありません。よって、被代襲者の遺留分放棄の効果は代襲者にも及び、減殺請求はすることはできないと考えられます。

 

【ワンポイント】

遺留分を放棄したいときは、家庭裁判所(被相続人となる者の住所地の家庭裁判所)に申立てをし、家庭裁判所の許可が必要です。合理的な理由がなければ却下されることもあります。

寄与分について相続人であるきょうだいの意見が調わないとき

質問

母が亡くなり、相続人は兄と姉と私です。私達夫婦は母と同居し、母の介護をずっとしていましたが、兄と姉は全く母の面倒を見てくれませんでした。しかし、母が死亡すると、2人とも「遺産を3等分するべきだ」と主張します。全く面倒を見なかった兄と姉と3等分することに納得できないのですが、どうすればいいでしょうか?

答え

相続人全員で話合いがつかない場合には、遺産分割の調停の申立てをするとともに(または遺産分割の調停の申立て後に)、寄与分を定める調停の申立てをします。(寄与分とは、相続人の中に、被相続人の事業を手伝った、金員などの財産の給付をした、病気を看病した、その他財産の増加などに特別の働きをした者がいる場合は、その者の働きの評価額のことをいいます)

寄与分は、遺産分割にあたって、法定相続分を超える財産を取得させることにより、他の相続人間の衡平を図る制度で、通常は共同相続人全員の協議によって決めるのが原則です。今回のように、相続人間での協議が調わなかったり、失踪や海外に長期滞在するなどの不在者がいるとき等協議することができないときは、家庭裁判所の調停・審判によって定められます。

寄与が認められる主な類型としては

 ① 家事従事型

 ② 金銭出資型

 ③ 扶養型

 ④ 療養看護型

 ⑤ 財産管理型

 ⑥ 競合型(①~⑤が競合した場合)

があります。

しかし、注意が必要なのは、被相続人(今回の場合は母)に対する貢献があっても、その行為により「被相続人の財産の維持または増加」したことが必要であり、「特別の寄与」でなければならないのです。被相続人の身分関係に基づき、通常期待される程度を超える寄与でなければならず、単にきょうだいの中で自分一人だけが親の面倒を見た...だけの理由では「特別の寄与」と評価されにくいです。

 

ですので、母の介護を行い、介護・看護費用等を代わりに支出することによって相続財産の維持を図った...ということであれば、寄与分は認められる可能性があります。

しかし、費用等は全て母の預貯金から支払った...ということであれば認められないかと思われます。

 

 

【ワンポイント】

寄与分を認められるのは「被相続人の財産の維持または増加」したか?ということです。親の介護や看護は大変なことですが、面倒を見ただけの理由では「特別の寄与」と評価されにくいということです。

 

 

 

 

 

 

 

悪意の財産隠しは、デメリットが大きい

質問

ドラマやニュースなどで、税金逃れのために財産を隠して発覚する…という話をみかけますが、実際に相続税の申告などで財産を隠した場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか?

答え

株券や割引債、預貯金などを申告せずに、税務調査で発覚することがあります。

それが悪意があって「隠していた」(仮装隠ぺい)と認められると

①配偶者控除が使えない

②重加算税がかかる

という大きなデメリットがあります。

上記①は、配偶者が相続した遺産額が1億6000万円までか、1億6000万円を超えていても配偶者の法定相続分までならば相続税はかかりません。たとえば、課税価格が2億円の場合、法定相続分の2分の1を配偶者が相続した場合、1億円分については相続税が課税されないのですが、この控除が使えません。

上記②は、増差本税の35%または40%相当額がかかり、大きな負担になります。

 

そのほかにも、

延滞税...法定納期限の翌日から完納日までの日数に応じて平成22年中に納期限の場合は年4.3%「特例基準割合(前年の11月30日の日本銀行が定める基準割引率+4%)」(修正申告・期限後申告の提出日から2ヶ月、更正・決定の日から3ヶ月を経過すると14.6%

 

過少申告加算税...過少申告加算税は原則として増差税額の10%の税率が課税される。計算式は、(追加納付税額×10%)+(追加納付税額-期限内納付税額と50万円のいずれか多い金額)×5%。ただし、過少申告加算税と重加算税が同時に課税されることはない。

 

・偽りその他不正の行為により(通常査察による立件)相続税を免れた者は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金

などがあります。

 

申告していない預貯金を税務署は、どんなところから発見するのでしょうか。

税務署は、相続開始前の5年間の資産の動きは全て見ます。預貯金の動きを見て、例えば被相続人の定期預金が満期になって引き出された後に、預金されていなければ、家族の口座に入金や預け替えされていないかを調べます。

実務的には贈与なのか名義預金なのかということになるのですが、その場合には贈与税の申告がされているか、利息は誰の口座に入金され、誰が使ったのか、誰が通帳と印鑑の管理をしていたのかなどを調べます。

もし、贈与されたものであれば、その通帳は贈与された人が管理をし、利息もその人の収入になるのが普通です。しかし、管理を贈与された人ではなく贈与した人がし、印鑑も自分の名義の預金と同じ印鑑を使ったり自分で管理していると、それは贈与とみなされず「名義預金」とみなされます。

ですから、贈与された場合は、印鑑を共有せずにきっちりと分け、贈与された人が自身で管理・運用しなければなりません。

そうでなければ名義預金として、申告する必要があります。

名義は変わっていても内容で判断される為、注意が必要です。

 

【ワンポイント】

悪意のある財産隠しは、税務調査で発覚すると本来の税額以外にたくさんの税金がかかります。税率によっては隠していた財産のほとんどを納税しなければなくなる場合もあるので、きちんと申告しましょう。

 

預貯金と生命保険の違いは?

質問

先日、保険の担当者から「預金よりも生命保険の方が相続にはいいですよ」と言われました。どう違うのですか?

答え

たとえば、1000万円の資金があると仮定します。

その資金を全額預金していた場合と、すべて生命保険の掛け金とした場合で、どのような違いがあるかあげてみましょう。

生命保険の有利な点としては

①保険料負担者(掛金を払う人)を変えることによって相続税の課税対象から除外することができる

②非課税枠がある

③納税資金となる

④遺産分割がしやすい

があります。

②の非課税枠についてですが、「契約者・被保険者が被相続人、保険金の受取人が相続人」の生命保険だと、その契約により支払われる死亡保険金は相続税の対象となりますが、一定金額までの生命保険金には相続税がかからないということです。

これは遺族の生活保障部分の生命保険金には税金をかけないということで、相続人が受け取った保険金については、「500万円×法定相続人の数」までは非課税となっています。

ですので、たとえば相続人が4人いる場合には、「500万円×4=2000万円」までは非課税となります。

預貯金をいくら「生活資金のため」に残していても、このような非課税枠はありませんので、そのまま税金の課税対象になります。

しかし、メリットばかりではありません。

生命保険の場合、1000万円の掛金で最終的に多額の保険金を受け取ることができるものもありますが、保険の種類や掛け方によっては、元本が保障されていないものがあるので注意が必要です。

しかしながら、相続に関して、生命保険の効果は絶大です。

ですが、どのような生命保険がよいのかは、それぞれの生活スタイルにより異なりますので、万一のときに遺族にどのような問題が起きるのかを考える必要があり、おもに下記の3つにわけられるでしょう。

①残される家族の生活費や教育費

②相続税の納税資金

③遺産分割のトラブル

現在(当面)必要なお金=預貯金と、将来必要になってくるであろうお金の計算と時期をあらかじめ考えることが必要です。

また、契約者・被保険者・受取人が誰になるかによって、税金のかかり方も違ってきます。

上記②については税理士に計算してもらい、掛け方についても相談するとよいでしょう。

生命保険を選ぶポイントは、入り過ぎていないか?足りないものはないか?です。

ムリ、ムラ、ムダをなくすのが保険です。

相続だけでなく、結婚、子供の入学・就職・結婚、定年等の大きな節目を目途に、保険を見直すこともポイントです。

 

 【ワンポイント】

生命保険のメリットは、保険料負担者を変えることにより相続税の課税対象から除外することができる、非課税枠(500万円×法定相続人の数)があることなどです。

 

 

 

相続した土地にアパートを建てるときに注意することは?

質問

父が所有する土地がいくつかあるのですが、最近、不動産業者より強くアパート建設を勧められています。子どもの私たちは、相続税が心配なのですが、父がアパートを建てるときに注意することは何でしょうか?

答え

アパートを建てると確かに相続税の節税になりますが、全ての土地にアパートを建ててしまうと物納ができなくなる恐れがあります。

物納するには、その土地にアパートが建てられていて賃借人がいれば難しくなりますので、物納用地として確保するならば、駐車場や農地のような土地を用意しておく必要があります。

そのため、相続財産となる全体の土地がどれくらいあるのかしっかりと把握し、相続税に支払わなければならない金額を計算し、相続税の支払いに必要な土地がどれくらいなのかきちんと考えた上で、その残りの土地にアパートなどの収益物件を建てるようにします。

アパートの建て過ぎは次の相続の際にもめる原因にもなります。

物納するためにアパートを取り壊すことになっても従来の借家契約では賃借人は簡単には出ていけません。新定期借家制度をうまく利用していきたいものです。

また、アパートは空室になる恐れもあります。空室が多いと資金繰りが苦しくなり、借入の返済が滞ってしまっては税金対策どころではありません。アパート建設の計画をするときには、周囲の状況や環境をつかみ、将来を予測してこの空室リスクを確認してよく検討する必要があります。

土地を多く所有する方は、まず、5つに分けて検討します。

①居住用...自宅として家族の住まいにする。

②収益用...そこから収益を得るためにアパートやマンション等を建てる。

③物納用...相続税を現金で納める代わりに土地を物納すれば、譲渡所得税もかからず相続税評価額で税務署は収納してくれる。ただし、建物が建っていない土地が望ましいので、駐車場や農地などを所有していると便利。

④生き甲斐用...生き甲斐となるお店や、作物を作ることができる農地を残す→たとえ高齢になっても仕事となるものがあれば、生き甲斐や趣味にもなり、生活のリズムもつくれ健康な生活を保つことにもつながる。

⑤検討用...土地を売って現金にするか、それともそのままにしておくかという検討ができる土地を残しておく。

 

【ワンポイント】

相続税の支払いにどれくらい土地が必要かを見極めたうえで、残った土地がアパートの立地条件に良いか、周囲の状況や環境、そして将来を予測して空室リスクを確認・検討してから建てるようにしましょう。

相続で取得した土地の固定資産税の節税方法は?

質問

相続で土地を取得することになりました。固定資産税を節税できる方法があれば教えてください。

答え

土地を取得すれば固定資産が課税されます。アパートのある土地は評価額の3分の1(1世帯につき200㎡以下の部分は6分の1)が住宅用地として安くなりますが、駐車場の土地はそのままです。

ところがアパートと駐車場が一体利用の場合ですと、全部が住宅用地となり、軽減されます。

たとえばアパートの敷地が300㎡、その隣の駐車場が300㎡あり、そのアパートの敷地と駐車場とが分筆して登記されている場合、固定資産税はアパートの敷地が住宅用地として軽減され、駐車場は100%の評価で課税されてしまいます。

しかし、実際は駐車場のほとんどはアパートの住人が利用していることが説明できれば、住宅用地の一体利用として、固定資産税はアパートの敷地と駐車場の合計600㎡について軽減の評価で課税されます。

もし、住人以外に利用される駐車場(例えばコインパーキング等や住人以外の賃貸がメインとなる駐車場)であれば、もともとの100%評価で課税されます。

住宅用地の一体利用として認めてもらうためには、固定資産税の住宅用地等申告書を提出しなければなりません。この住宅用地の一体利用には、その駐車場の利用者のほとんどがそのアパートの入居者であれば、その土地の面積は関係ありません。

なお、一体利用の考え方は、相続税の財産評価の際も同様で、駐車場を自用地とせず、同一区画として貸家建付地として評価できます。

 

【ワンポイント】

固定資産税の住宅用地等申告書は、本人が道府県民税事務所や市役所に提出すれば手続できます。

相続開始の日から遺産分割協議までの収入は誰のもの?

質問

賃貸マンションを所有する父が亡くなりました。相続人は3人いるのですが、遺産分割協議はすぐに決まりそうにありません。決まるまでの期間、その賃貸収入は誰のものになるのでしょうか?

答え

相続が発生した後、遺産分割協議が終われば、アパートやマンション等からの収入はその物件を相続した人のものになります。

しかし、相続開始から遺産分割協議が終わるまでの期間は、申告期限等もあるので、大体10カ月近くかかります。また、相続人間で揉め、それ以上かかることもあります。しかし、その間に賃貸収入は当然発生します。

その間は誰のもの?という疑問は当然発生しますが、税務上は、相続の開始の日から遺産分割協議が終わるまでの収入は法定相続分で処理するようになっています。

例えば、相続人が配偶者と子供2人のケースですと、配偶者がマンションを全て相続し、子どもは相続しなかったとしても、遺産分割協議が終わるまでは、そのマンションによる収入は全てを配偶者のものとするのではなく、配偶者は法定相続分の2分の1、子どもも法定相続分の4分の1ずつと分けて税金の処理をすることになります。もちろん収入だけでなく、そのマンションに関する借入金や利息、固定資産税等も同様に法定相続分で按分して処理しなければなりません。

また、不動産所得や事業所得などの所得税の確定申告が必要であった人が亡くなられた場合は、その年の1月1日から亡くなられた日までの所得の申告=準確定申告をしなければなりません。この申告は相続人全員が納税者となり、申告をする義務があります。期間は4ヶ月間と短く、注意が必要です。

一方、亡くなられた日から12月31日までの収入分は、相続人の所得として申告しなければなりません。この申告は、通常の確定申告なので翌年の3月15日までが期限となります。

法律上、相続人が数人いるときは、その相続財産はその共有に属します。さらに、各共同相続人はその相続分に応じて被相続人の権利義務を承継します。ですから厳密にいえば、遺産分割協議が終わるまでは、その財産は各相続人の共有です。そのため個々の財産については、共同相続人全員の合意がなければ、処分することができないのです。

ただし、相続開始前から、被相続人の許諾を得て遺産となった建物で同居してきたときは、特段の事情のない限り、相続開始後も遺産分割により建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、被相続人と同居の相続人との間で引き続き同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されます。

つまり、複数の相続人がいる場合に、自分の法定相続分に相当する範囲を超えて建物全部を使用していても、その同居が相続開始前から被相続人の承知していたものであれば、遺産分割協議までの間もそのまま居住することができます。

 

【ワンポイント】

亡くなられた日から遺産分割協議が終わるまでの収入は、法定相続分で按分して処理をすることになります。収入だけでなく、借入利息や固定資産税等の経費も同様に法定相続分で按分して処理をし、確定申告が必要になるので注意しましょう。

配偶者が相続する財産は、節税を考えて決める

質問

父が亡くなり、母と子2人の計3人で遺産分割を考えていますが、どのように分けたらいいのか悩んでいます。母には他にも財産があるため、2次相続が心配です。どう分割協議を進めたらよいでしょうか?

答え

遺産分割協議を進めるなかで、母親が相続したほうが有利なのは、今後評価が下がりそうなものです。

たとえば、土地とか株式のなかで今後評価が下がりそうなものは、母親が相続したほうがよいでしょう。

これは、2次相続に影響があるからです。

次に母親が亡くなられた時には、父親(夫)から相続等により受け取られた財産と自ら形成された財産が対象になります。そのときにはもう配偶者の税額軽減は使えませんし、相続人の数も1人分少なくなるのですから基礎控除額も減り、相続税は高くなる可能性があります。

ですから、父親が亡くなったときの1次相続では、今後評価の上がりそうなものはできるだけ、子供たちに配分し、下がりそうなものは母親に配分するほうが税務上有利になります。

小規模宅地の評価減を受ける土地も、今後、小規模宅地の評価減の見直しがされ、適用条件が厳しくなり、条件によっては次の相続では適用できなくなる可能性も考えられるます。2次相続の時に適用できなければかなりの負担になる為、現在適用できるのであれば、先に子どもが評価減を受けて相続するとよいでしょう。

また2次相続の特徴は配偶者の税額軽減がないことです。

例えば、父親が亡くなった1次相続で、4億円の遺産があったとすると、妻・子ども2人の場合、相続税は4,050万円になります。

これが、2次相続で2億円の遺産を子ども2人で相続する場合、相続税は2,500万円になり、相続財産は半分に減っているのに、相続税は半分になっていません。

ですから、1次相続のときに、母親の取り分が少ないほうが、1次相続、2次相続を合わせて考えると、節税になります。しかし、実際には多くの配偶者が半分以上を相続しています。

ついつい目先のことだけで判断しがちですが、2次相続のことを必ず考慮し、1次相続の分割協議をしましょう。

現在の母親の財産を確認し、税理士に2次相続までの税額のシミュレーションをしてもらい、1次相続の遺産分割協議をするとよいでしょう。

 

【ワンポイント】

2次相続は配偶者の税額軽減がないので、相続財産が2次相続で半分になっていても相続税額は半分にならないことに注意しましょう。

 

遺産分割でもめていると相続税の物納はできない?

質問

半年前に相続が発生し、今は遺産分割協議中です。財産のほとんどが土地なので物納を考えているのですが、もし、申告期限までに分割協議が整わなければ、物納はできないのでしょうか?

答え

遺産は、遺産分割協議が整うまでは、相続人の共有財産です。共有財産の物納は認められていないので、物納申請の期限内に協議が決着しなかった場合は原則的に物納はできません。

物納の申請には相続の開始から10カ月以内という期限がありますので、相続税の物納を検討されているならば10カ月以内に遺産分割協議を終了させることが必要です。共有財産についても、共有者全員がそれぞれの持ち分をすべて物納する場合にのみ、物納が認められています。

つまり、ある特定の遺産を物納することについて相続人全員が了解し、分割協議が終了していれば、その他の遺産について分割協議中であっても、物納の申請は可能となります。

しかし、分割協議がこじれているときに、ある特定の財産について相続人全員が同様な判断をすることは現実には難しいことでしょう。

相続税の申告・納付期限は物納の申請と同じ10カ月ですので、分割協議が整わないまま期限を過ぎてしまうと税務署が独自の調査による税額を通知してきます。これを「決定」というのですが、決定処分が行われると無申告加算税がさらにかかることになります。

また、この決定処分が行われる前に「期限後申告」を行うこともできますが、その際にも加算税と延滞税がかかります。

このように、分割協議がこじれてしまい相続税の申告や納付が遅れることは、相続人全員にとって大きな損失です。できるだけ10カ月の期限内に分割協議を終える努力が必要です。

また税金面だけではなく、分割協議が整わないということは、その財産を有効に活用することができないだけでなく、その財産の維持費(土地等であれば固定資産税や現状維持費等)がかかってくることになります。

相続人全員にとって、分割協議が長期にわたることは大きな損失です。

これらのことを踏まえ、10か月以内に分割協議を終えるように気をつけましょう。

 

【ワンポイント】

10か月以内に分割協議を終えなければ、物納ができないばかりか、相続税以外に加算税や延滞税、無申告加算税がかかることもあり、維持費等も余分にかかってしまいますので、できるだけ期限内に分割協議を終えましょう。

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