質問
他人に土地の一部(宅地)を貸しています。この土地は相続が発生したらどのような影響があるのでしょうか?
答え
その土地の地代は採算が合っていますか?
入ってくる地代は安く、毎年支払っている固定資産税の方が高い...という状況ではありませんか?
もしそのような状態の中で、他にも資産を所有しておられ、万が一相続が発生した時に、相続税がかなりかかってくるとしたらどうでしょう?
いざ、納税のために、貸宅地を処分しようとしても、なかなか簡単には売れません。
仮に売れたとしてもかなり低い金額でしか売れないでしょう。
では、このような貸宅地はどのように考えていけばよいでしょうか。
次のような方法等で貸宅地の処分について検討するのがよいでしょう。
(1)借地権者に底地を買い取ってもらう。
(2)逆に借地権者から、借地権を買い取る。
(3)借地権者と共同で、第三者へ売却する。
(4)借地権と底地を交換する。
(5)借地権者と共同で事業を行う。
(6)底地の買い取り専門業者に買い取ってもらう。
以上の6つの手法があります。
貸宅地の生前整理法としては、(1)や(6)の底地を買い取ってもらう方法が一般的です。
貸宅地は、収益性も低く換金性に劣っていることから、課税される相続税を考えると大きな「負の遺産=死産」ともいえるでしょう。したがって、貸宅地のような不良資産は優良資産へ組み換えたり、生前に処分して換金化するなど、整理の必要性が生じてくるのです。
最後に物納という方法もありますが、年間の固定資産税の三倍相当額の地代の授受が必要であったり、賃貸借契約書の整備等条件が厳しいのが通例です。
【ワンポイント】
貸宅地は、不良資産であるため、早めに処分するのが得策です。
質問
前回、「小規模宅地等の課税価格の計算の特例」の話で4種類の選択方法がありましたが、どのような選択をすればいいのかポイントを教えて下さい。
答え
前回、「小規模宅地等の課税価格の計算の特例」について説明しました。(措置法69の4)
これはわかりやすくいいますと、①居住用、②事業用、③貸付用の3つに大別されています。
まず①の居住用ですが、
土地の面積が240平方メートルまでの部分につき評価を80%減額できるものです。ただし、一定の要件がありますので、該当しなければ50%の減額にとどまります。
次に②の事業用ですが、
土地の面積が400平方メートルまでの部分について、評価を80%減額できます。これも一定の要件をクリアしなければ50%の減額となります。
最後に③の貸付用ですが、
土地の面積200平方メートルまでの部分について、50%の評価額の減額を行うものですが、青空駐車場については適用できません。
これら3つをうまく組み合わせて、実際の申告時には適用することになります。
そこで、どのような選択をしていけば、最終的に全体の評価を引き下げることができるかをご説明します。
まず、それぞれの土地について、1平方メートル当たりの評価減額できる金額を算出します。
次に、この中でもっとも評価減額できる土地を洗い出し、適用面積を乗じます。この特例は、最大で400平方メートルまでの適用ですので、一定の算式に当てはめて、例えば居住用が220平方メートルの適用で、事業用が残り180平方メートルの適用といったケースもありえます。
ここでポイントをまとめてみると、次のようになります。
①評価減額できる金額が最大な土地から適用していく。
②配偶者の場合は、税額軽減の特例があるのでなるべく利用しないこと。
③養子は2割加算されるので、評価減額ができる金額が高ければ適用したほうが有利です。
【ワンポイント】
この特例は、選択した土地によって大きく税額が変わってくるので、誰が取得した土地かを考えて適用するようにします。
質問
相続税の納税のために自宅の土地を手放さなければならないなどという話を聞いたことがあるのですが、相続の仕方によって避けることはできるのでしょうか?
答え
都市部では、ちょっとした土地を所有しているだけで多額の相続税がかかったり、相続税の支払いのために自宅の土地を手放さなければならなくなったという方の話を耳にすると思います。
しかし、相続税が生活の基盤を脅かすことがあってはいけないという配慮から、一定の自宅の土地と事業用の土地なでについては、通常の相続税評価額を大幅に減額する「小規模宅地等の課税価格の計算の特例」が設けられています。
この特例の適用により、最大で80%割引となりますので、使い方次第で節税効果が異なってきます。
小規模宅地等には次の4種類があります。
(1)特定居住用宅地等
被相続人の居住用の土地として利用していた土地で一定の要件を満たしているときには、240平方メートルまで80%の評価減が適用されます。
(2)特定事業用宅地等
被相続人が事業用の土地として利用していた土地で一定の要件を満たした場合には、400平方メートルまで80%の評価減が適用されます。
(3)特定同族会社事業用宅地等
被相続人および被相続人と生計を一にする親族の持株割合が50%以上の同族会社の事業用に利用していた土地で、一定の要件を満たした場合には、400平方メートルまで80%の評価減が適用されます。
(4)その他の小規模宅地等
被相続人が不動産貸付用に利用していた場合には200平方メートルまで50%の評価減が適用されます。
これらの特例の使い方次第で、相続税評価額1億円の土地が5,000万円になったり2,000万円となったりしますので、有効に活用しましょう。
【ワンポイント】
この特例は、原則として1平方メートル当たりの評価減額が大きいものから適用しますが、配偶者は税額軽減の特例がありますので、子供が相続する土地から適用するのが賢明です。
質問
複数の土地を所有しています。しかしこのままだと将来相続税がかかった時に支払える金融資産は少なく土地を処分することになりそうです。どのようにすればよいでしょうか?
答え
土地には様々なものがあり、これらには必ずといってよいほど、目的が生じてきます。
例えば
①収益性を高めたい、
②将来の納税資金に充てたい、
③居住の用として維持したい、
④事業の用に活用したい等です。
これらの目的に見合った土地の活用が、実際にできるかどうかを判断するものとして、「土地の健康診断」があります。
この「土地の健康診断」とは、個人の方が所有している土地のすべてについて、有効に活用されているか?収益性は?採算性は?という具合に、われわれ人間の体と同様にどこか悪い所はないかを診断するものです。
この「土地の健康診断」の効果として大きく二つ挙げられます。
第一に、「土地の色分け」ができることです。
これは、先ほどの採算性や収益性と大きく関わってきます。安い地代で固定資産税の負担が大きく採算性の悪いものや、有効利用や納税用地として活用できない「死んだ土地」を的確に把握できます。この「死んだ土地」を優良な資産へと組み換えて、将来の収益力を高め、納税資金も準備することができます。
第二に、「土地を守ることができる」ことです。
いざ実際に相続が開始された場合に、納税のために優良な資産や大切な自宅を手放すことがないよう、事前に防衛することができます。
色分けにあたり、
「家」にとって必ず死守しなければならないもの、
採算を重視してゆとりある生活ができるよう有効活用して相続後も残したいもの、
あるいは納税に充てたいもの
を区別することが大切です。
ゴールを明確に設定し、優良な土地や必要な土地を守り、不良な土地を収益力が高い優良な土地へと組み換えていくことが、「土地の健康診断」の目的です。
一度「土地の健康診断」をしてみてはいかがでしょうか?
【ワンポイント】
土地の健康診断で収益性や採算性に劣る土地は、早めに処分するか優良な土地へと組み換えましょう。
質問
病院(医療法人)の理事長をしています。この病院に多額の貸付金がありますが、経営が思わしくなく全額の返済は困難と思われます。万が一の時に、この貸付金はどのようなことになるのでしょうか?
答え
法人の運営上、理事長が自ら個人のお金を医療法人の運転資金につぎ込み、資金援助しているというケースはよく見受けられます。
これは、医療法人にしてみれば「借入金」となり、理事長個人からは「貸付金」という債権債務の関係となります。
この理事長の貸付金を放置したまま時が経過し、相続を迎えたとしたらどうなるでしょう?ということが今回のご質問ですが、理事長が運転資金として医療法人に貸し付けたお金は、当然「貸付金」という相続財産に含まれ、相続税の課税対象となります。
その対策としては、医療法人へ貸し付けているお金を事前に書面をもって、「債権放棄」をするのです。これは「債権放棄通知書」なるものを債権者である理事長個人から、債権者である医療法人へ通知するものです。
この場合、配達証明付きの内容証明郵便で意思表示しておけば、確実な裏付け書類となります。
ただし、債権放棄するということは、医療法人は利益を受けることになりますから、「債務免除益」として、法人税の計算上、益金となり法人税が課税されます。
そこで、税務上の繰越欠損金がある医療法人は、債務免除益と繰越欠損金とが相殺される形となりますので、繰越欠損金の範囲内の債権放棄をお勧めします。
ただ、注意点として、理事長の債権放棄により、医療法人の純資産価額がその債権免除された部分だけ増加します。
この結果、医療法人の出資金の価値が上がった場合には、その上がった部分の金額は、理事長から他の出資者への贈与と見なされて、贈与税が課税されることがありますので、ご注意ください。
【ワンポイント】
相続財産である貸付金が減少すれば、確かに相続税はおのずと減少しますが、注意点も生じることがありますので、慎重に実行するようにしてください。
質問
贈与税の基礎控除額は年間110万円と聞きました。有効な活用方法を教えて下さい。
答え
おっしゃる通り、贈与税は年間110万円の基礎控除が認められています。
そこで、この110万円の基礎控除を有効に活用する意味で、生命保険の契約の仕方を工夫してみましょう。
親が保険料相当額の贈与を子供に行い、その子供が贈与を受けた現金預金で親を被保険者とする生命保険契約に加入すれば、相続財産の減少による相続税の節税効果と、納税資金対策を同時に実行することができます。
つまり、一般的には「保険料贈与プラン」といわれるものです。
この場合、生命保険に加入する際の契約形態は、
(1)契約者=子供
(2)被保険者(保険の目的とされる人)=親
(3)保険金受取人=子供
というような形態です。
一般的には、資金力に乏しい子供に保険料相当額の贈与を行うことにより実行できるプランです。
この場合、子供の受取保険金の課税関係は所得税の課税対象とされ、一時所得として下図のような算式で課税が行われます。
一時所得の税率は、総合課税のため、その子供の所得状況により異なります。
したがって、その子供の所得税率と、実際に親に相続が発生した場合の相続税率(予想)を比較し、その相続税率よりも所得税率が低ければ贈与プランは成功だといえます。
実際に子供が保険料を負担していたことを立証できるように、次の点に気をつけなければなりません。
①毎年の贈与契約書を作成しておく。
②子供が贈与税の申告書を提出する。
③子供が生命保険料控除の適用をする。
の三点です。
●一時所得の金額(課税対象金額)
(受取保険金-払込保険料の合計額-50万円特別控除)×1/2
【損益分岐点】
相続税率表 所得税率表
各法定相続人の取得金額 一時所得の金額
1,000万円以下 10% 1,950,000円以下 5%
3,000万円以下 15% 1,950,000円超3,300,000円以下 10%
5,000万円以下 20% 3,300,000円超6,950,000円以下 20%
1億円以下 30% 6,950,000円超9,000,000円以下 23%
3億円以下 40% 9,000,000円超18,000,000円以下 33%
3億円超 50% 18,000,000円超 40%
相続税率 ≧ 所得税率
【ワンポイント】
子供が贈与を受けていうことを証明するために、親から子供の銀行口座に保険料相当額の振込をするとよいでしょう。
質問
預金と不動産を所有していますが、預金は不動産に比べて少なく、相続の時に家や土地をめぐって家族間でもめたりする話をよく聞きます。 スムーズな遺産分けの方法はありますか?
答え
相続財産には現金預金や株式などの金融商品や不動産・ゴルフ会員権などがあります。その大部分の約70%を占めるのが、不動産だといわれています。
不動産の中でも自宅や賃貸マンション、貸宅地など様々なものがありますが、いざ相続が発生して比較的簡単に分割できるものもあれば、分割が難しいものもあります。
例えば、土地を複数で共有しますと、担保に入れたり活用したり売却する場合には、共有者全員のハンコが必要となり、各人の自由にはなかなかならないのが通例です。
しかし、生命保険金を活用すると、遺産分割がスムーズに解決します。
契約時に保険受取人を定めますが、その指定割合により、保険会社は保険金の支払いを行いますので、スムーズに事が運びます。
例えば、個人で医院を経営していた父に相続が発生し、母と子三人(長男・次男・長女)が相続人とします。父が残した財産が自宅と事業用財産という場合に、自宅を老後のことを考えて母に相続させ、医院を引き継いだ長男に事業用財産を相続させてしまえば、二男と長女には何の財産もないことになります。
そこで将来の分割のことを見据えて、新たな生命保険に加入し、次男と長女を保険受取人として契約時に指定しておくのです。
このようにしておくと、万が一のとき、指定したとおりの保険金が保険会社から振り込まれますので、遺産分割も円満に済ませることができるのです。
ただ、資金的に新規に加入することが難しい場合には、無理をせずに従来から加入していた生命保険契約の受取人の指定割合を見直すなどすれば解決するでしょう。
最後にこの生命保険金は、仮に「相続の放棄」が行われたとしても、受取人固有の財産ですので、契約どおり保険金を受け取ることができます。覚えておいてください。
【ワンポイント】
生命保険を活用した分割方法は、将来の円満な相続の実現に役立ちます。
質問
相続税がかかるとしたら、今の預貯金で支払えるかどうか不安です。納税資金はどのように準備すればよいのでしょうか?
答え
相続が発生してまず頭に浮かぶのは、相続税が払えるのかな?という心配かもしれませんね。
その心配を払拭するためには、生前に何らかの方法で、納税資金の準備をしておく必要があります。
その代表的なものが「生命保険の活用」です。
生命保険は、様々な商品があります。いったいどのような保険商品に加入すればよいのか悩まれるところだと思われます。
生命保険は次のように分類されます。
(1)終身保険
(2)定期保険
(3)養老保険
(4)個人年金保険
(5)医療保険
(6)ガン保険
などです。
このうち、相続税の納税資金としてもっとも適しているのが、(1)の終身保険です。
この終身保険というのは、一生涯の保障がなされている保険ですので、万が一相続が発生すれば、保険金の請求ができます。
この死亡保険金を納税資金に充てるのです。
生命保険には、このほかにも(2)の定期保険というものがありますが、定期保険は、保障期間の満期があらかじめ定められているので、納税資金を目的とする保険には適していません。
ただ最近では、生命保険会社によっては95歳満期のものや、100歳満期の定期保険も取り扱っているようです。
生命保険以外にも、土地の売却や退職金なども納税資金に充てるものとして考えられます。土地の売却は、売れるかどうか?不確定な部分があります。また退職金もある限度額までしか支給されない点を考えれば、やはり生命保険が納税資金を準備する手段としてかなり大きな力を発揮します。
【ワンポイント】
生命保険は、当然若いうちが保険料も安く加入しやすいので、目的に合った商品を専門家に相談したうえで加入することをお勧めします。
質問
生命保険は亡くなってからのちに家族に支払われるのに相続税はかかるのでしょうか?
答え
被相続人が死亡した時点では財産ではなかったものが、被相続人の死亡によって相続財産となるものがあります。これは、被相続人が生前に所有していた財産ではありませんので本来的な相続ではないのですが、相続財産と見なして相続税がかかることになっています。
この「みなし相続財産」には、生命保険契約に関する権利、定期金に関する権利など多くあります。実際に課税される例として多いのは、生命保険金と死亡退職金の2つです。
生命保険金は、被相続人が死亡した日には、被相続人の財産ではありません。しかし、相続人が保険金を受け取れたのは、被相続人が保険料を払い込んでいたためであり、その被相続人が死亡したためです。実質的に考えますと生命保険金は被相続人から受け取った財産と変わらないのです。
死亡退職金は、死亡した被相続人に代わって遺族が会社から退職金を受け取るものです。
退職金は、被相続人が死亡しなければ本人が直接もらえたはずですし、被相続人の死亡により遺族に退職金が支払われたわけですから、こちらも生命保険金と同様に被相続人からもらった財産と変わらないといえます。
ただし、相続税がかかる死亡退職金は、被相続人が死亡してから3年以内に支払われることが確定しているものだけです。
以上のように、生命保険金や死亡退職金は相続税の課税対象となりますが、残された遺族の生活を保障するため、一定の金額までが非課税とされています。
その一定の金額は、500万円×法定相続人数となっています。
例えば、法定相続人が配偶者と子供2人の場合には、500万円×3人=1,500万円が非課税となります。
【ワンポイント】
契約形態で課税関係が変わります。契約形態で相続税、贈与税、所得税が課税されますので、一度保険証券を見て内容を吟味しておくことが大切です。
質問
孫に財産分けをしたいので、養子縁組の話をしたら孫の親である私の子供が嫌がります。養子縁組をせずに孫に財産分けをすることができるでしょうか?また、養子縁組した時にどのような良い点・悪い点があるかも教えてください。
答え
相続とは親から子へ、子から孫へ、という具合に財産が承継されるのが通常です。
しかし、お孫さんと養子縁組をして、法律上の親子関係になれば、一世代飛び越して財産をお孫さんに相続させることができます。
また、養子縁組とまではいかなくても、遺言を行うことにより、お孫さんに財産を渡すことができます。これを「遺贈」といいます。
養子縁組をしたことによる効果を具体的にご説明します。
まず、養子も法定相続人になることから、遺産から控除する基礎控除額が1000万円増額でき、その分、課税される遺産額が減少します。
ただし、すでに実子がいる場合には(ご質問者の場合には)、法定相続人の数に算入される養子の数が制限され、一人しかカウントできません。ですから、二人のお孫さんを養子にした場合には、一人分しか基礎控除額は増加しません。
次に法定相続分と税率です。母と子一人の場合であれば、子は二分の一の法定相続分となりますが、これに養子一人が加われば、子の法定相続分は四分の一となります。(子の法定相続分が減ってしまうということです)
つまり、養子が法定相続人として加わることにより、必然的に法定相続分が減少し、その金額いかんによっては、税率が下がることになります。
しかし、プラス面だけではないことも頭に入れておきたいものです。
というのは「二割加算」の問題です。
前回のワンポイントアドバイスでもご紹介したとおり、配偶者と子などの一親等の血族以外の者が財産を取得する場合、通常計算された相続税額の20%が加算されることになります。
以前、お孫さんは二親等に該当し、二割加算の対象でしたが、養子縁組をすれば一親等に該当し、二割加算はされませんでした。しかし、平成15年度税制改正で、養子縁組したお孫さんも二割加算の対象となりました。
【ワンポイント】
お孫さんは二割加算されますが、基礎控除額1000万円が受けられますので、一度シュミレーションをして、養子縁組の是非を検討してみましょう。